リングガール天野麻菜の脳裏に焼きついている4試合。「洗礼を受けた」「感情の収拾がつかず泣いてしまった」 (2ページ目)

  • 小林 悟●取材・文 text by Kobayashi Satoru
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

【涙を堪えられなかった闘い】

「リングガールを始める直前まで、ボクシングと総合格闘技の違いもわからないほどだった」と振り返る天野さん。しかし、リングに立つようになってからは、メインイベント出場選手の過去の試合はもちろん、アンダーカードの選手についても知る努力を怠らない。ボクシングを好きになればなるほど、特定の選手を応援してしまいそうだが......。

「試合観戦の仕方について、決まりごとはないんです。ただ、私自身のルールとしてはどちらにも肩入れしないようにしています。日本人選手と海外選手でも、日本人選手同士でも、フラットな目線で観戦することを心がけていますね。

 どちらが勝つのかはもちろん興味がありますけど、気持ちが入りすぎると、インターバルでリングへ上がる時、自然な表情、立ち振る舞いをするのが難しくなってしまうので。ひとりのボクシングファンに戻るのは試合後、家に帰ってから。配信映像をあらためて観る時に、心から楽しんでいます(笑)」

この記事に関連する写真を見る フラットな目線を心がけるようになったのは、2019年7月、WBA世界ミドル級タイトルマッチ<村田諒太vsロブ・ブラント(アメリカ)>がきっかけだったという。

「前年に村田選手がブラント選手に負けてベルトを失っていたので、リベンジマッチで王座に返り咲けるかという注目の一戦でした。2回TKOで再度ミドル級王者になった村田選手がインタビューを受けていた時、涙をこらえきれなくなって。

 試合後に『リングガールのくせに何泣いてるんだ』『あの子が泣いていたせいで冷めた』など厳しい意見を受けました。好意的なコメントのほうが多かったんですが、そこに甘んじていてもいいものかと考えて。

 たしかに、リングガールはどちらの陣営にも公平であって、私的な感情を持ち込まないことで、両選手のファンに純粋に楽しんでいただけるものだなと考えをあらためました」

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