リングガール天野麻菜の脳裏に焼きついている4試合。「洗礼を受けた」「感情の収拾がつかず泣いてしまった」 (3ページ目)

  • 小林 悟●取材・文 text by Kobayashi Satoru
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

【ボクシングの「儚さ」に心打たれた一戦】

 平常心を保ち、ボクシングの魅力がより伝わるよう心がけてきたという天野さんだが、それでもこらえきれず涙することもある。なかでも忘れられない試合が、2022年4月開催の世界ミドル級王座統一戦<村田vsゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)>だという。

「村田選手が負けて悔しかったわけではないんです。それまで生で、映像で、何度も試合を観ていたし、この試合にたどり着くまでいかに努力し続けたかも自分なりに勉強しましたし、勝ってほしいと願っていました。

 一方で、ゴロフキン選手も同じくらい応援していました。最初にリングに立っている姿を見た時に、その存在感に圧倒されて。オーラが違うんです。それなのに、私を含めてスタッフにも丁寧で礼儀正しくて優しい。

 本当は2021年に行なわれる予定の試合でしたが、コロナ禍で延期になり、ようやく実現したスーパーマッチ。結果はゴロフキン選手が9回TKO勝利。どちらも尊敬するボクサーなのに、必ず勝敗がついてしまう。ボクシングという競技の厳しさ、儚さに心を打たれ、感情の収拾がつかなくなって泣いてしまいました。

 涙をこらえられたらよかったんですが、リングガールとしては、リングに上がったボクサーふたりに心から『ベストパフォーマンスを!』と思えて、精神的に成長できた試合でした」

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