「伊調馨さんは現役を引退されたのですか?」。オリンピック4連覇の最強女王に素朴な質問をぶつけてみた (4ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 特に、相手が女の子だと複雑です。男の子は『レスリングをやってモテたい。強くなりたい』という気持ちがわかりやすいけど、女の子はレスリングへの取り組み方も違うし、すぐに甘えが出ます。だから性格を見抜き、どんな時に甘えが出るのかわかったうえで、どのタイミングでどう言ったら響くかを考えないとダメですね。そのためには毎日、接していないとわからない部分もあります」

---- 以前、理想のコーチは「選手と一緒にレスリングを作っていけるコーチ」と言っていました。あらためて、いかがでしょうか?

「その考えは今も変わっていません。ですが、まだまだ実力不足。メンタル面まで面倒みきれない部分があって、今は技術指導に特化しないと無理かな。その技術も、まだ知らないことがたくさんあるので、選手によって提案できる引き出しが限られています。

 それでも、私とスタイルが合う選手はいいんです。『自分のスタイルにプラスしたいなら、この技を覚えてみれば?』と提案できますから。でも、スタイルが違ってくると、本人が聞きたい内容と違うアドバイスになりそうで迷ってばかり。『これを教えたほうがいいかな......でも、それは私、得意じゃないし』みたいになって」

---- 理想のコーチ像を100点とすると、今は何点ぐらいですか?

「う〜ん、20〜30点かな」

---- これまた伊調さんらしい、自分に厳しい採点ですね。

「もっと技術ベースをしっかりと作って、どんどんアップデートしていかないと。その選手にとってアドバイスしたことが正解なのか、試合で試してみないとわからないじゃないですか。そうなると時間をかけないとダメなので、結果を出させるのは難しい。正解って何なのか、わからなくなります(笑)」

---- 以前、伊調さんはこう言っていました。「レスリングは辞めたくない。でも、いつかは辞めなければならないから、コーチになってレスリングを追及するのもいいかなと思っています」。今の手応えとして、レスリングは極められそうですか?

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