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UFCからプロレスに復帰後、朱里が直面した最愛の母の死。そこで「人生を賭けてプロレスをやる」と誓った (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • 林ユバ●撮影 photo by Hayashi Yuba

 翌朝、母は息を引き取った。

「なんでいてあげなかったんだろうってすごく思ったし、なにもできなかった自分に本当に苛立ちました。自分にとってお母さんは、すごく偉大で、大好きで、尊敬する存在だった。本当につらかったです」

インタビュー中に涙する場面もインタビュー中に涙する場面もこの記事に関連する写真を見る 翌月、岩谷麻優とタイトルマッチを行なった。結果は残せなかった。

 わたしが「恩返しはできたと思う」と言うと、「そう思ってくれていたらいいなって思います。お母さんに『産んでよかった』と思ってもらえる存在でありたいとすごく思う」と言い、彼女はまたワンワン泣いた。

 母が亡くなって、自分にはフィリピンの血が混ざっているということをあらためて意識するようになった。フィリピン人の母を誇りに思い、母の母国を自分も愛したい。試合後のマイクやSNSでタガログ語を使うようになった。好きな言葉は「マラミン・サラマポ」。とてもありがとう、という意味だ。

リングでは「感情を出せよ」

 11月1日付で、スターダムの所属選手となる。記者会見では「スターダムの内部に入って、一からベルトを獲りにいく」と力強く語った。

「人生を賭けて、プロレスをやるって決めたんです。スターダムに入って、注目されて、輝きたい。その姿を、応援してくれる人やお母さんに見せたいし、何より自分自身のために......。プロレスを13年やってきて、今まで悔しい思いとか、嫉妬心とか、表には出さなかったけどたくさんありました。でもスターダムに入ったら、自分は変われるんじゃないか、輝けるんじゃないかと思ったし、『そうなってやる』という気持ちが強いです」

 翌年6月12日、大田区総合体育館で再びワールド・オブ・スターダム王座のベルト、通称"赤いベルト"に挑戦した。チャンピオンの林下詩美は大会直前のインタビューで「感情を出すのが苦手」と話していたが、大会が始まってみるとこれでもかと感情剝き出しのファイトを見せた。そんな林下を引き出したのは、他でもない、朱里だ。

「感情を出せよって思いますね。自分はリングで朱里としての生き様を見せたいと思っています。思いとかそういうものって、出さないと伝わらないんですよ。リング外では自分もいま悩んでいる部分ではあるんですけど、言葉の力って強いじゃないですか。だから発言などが大切だなとすごく思っています」

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