魔裟斗が振り返るKIDとの伝説の一戦。予想外のダウンにやっぱり「KIDは持っている」 (4ページ目)

  • 栗田シメイ●文 text by Kurita Shimei

――そんな中、引退試合となる一戦でサワーと戦い、勝利を収めて花道を飾りましたね。

「2003年に世界チャンピオンになった時、もう一度優勝することを目標にして、そこから5年かかったものの2008年に優勝できて『やりきった』となった。引き際を探していたんですが、サワーに2回負けていたことが心残りで。それで2009年の大晦日にリベンジできましたけど、あの試合も負けていたら、もしくは相手がサワーじゃなかったら、引退してからも『サワーに勝てなかった』という悔しさがずっと残ることになったでしょうね。

のちにサワーと会う時にも、彼が『俺は魔裟斗に全勝している』と思っているんじゃないか、と考えてしまったはず。実際は、サワーがそう思うことはないでしょうけどね(笑)。ただ、そうなる可能性を残してリングを去ることは絶対に許せなかったし、僕の中ではその点は大きいことでした。だから最後にサワーに勝てたことで、本当にK-1でやり残したことがなくなり、次の人生に向かえたんです」

――現役時代に対戦した選手の中で、もっとも強かった選手を挙げるとしたら?

「やっぱりサワーですね。フィジカル、テクニックはもちろん、しっかり考えながら試合ができるタイプだったので」

――もし今、現役時代の体に戻ったとして、戦ってみたい現役の選手はいますか?

「木村ミノル選手ですね。あれだけ強打でバタバタと相手を倒していくところを見ていると、やっぱり熱くなるものがありますよ。あとは、ジョルジオ・ペトロシアン。僕が現役の時から変わらず、35歳になった今も世界最強ですから。僕が引退した2009年以降は1敗しかしていない。さっき『やり残したことはない』と言いましたけど、あれだけの選手と戦えなかったことに心残りがなかったかといえば、やっぱり嘘になりますね」

(後編:野村克也から受けた、大人になる教育)

■魔裟斗(まさと)
1979年、千葉県生まれ。1997年に全日本キックボクシング連盟での試合でプロデビュー。2003年の『K-1 WORLD MAX』で日本人初のK-1世界チャンピオンになり、2008年に2度目の王座を獲得。翌2009年12月31日の試合を最後に引退した。その後は格闘技だけでなく幅広いジャンルで活躍。2021年の3月には『魔裟斗チャンネル』と、武蔵との『ムサマサ!』を開設した。

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