魔裟斗が振り返るKIDとの伝説の一戦。予想外のダウンにやっぱり「KIDは持っている」 (2ページ目)

  • 栗田シメイ●文 text by Kurita Shimei

――同じ1ラウンドで、魔裟斗さんの脚の内側を狙ったローキックがローブローになってしまい、中断がありましたね。

「そこはちょっと焦りましたね。『大阪ドームでこれだけのお客さんが来てくれたのに、これで終わってしまうのはマズい』と。それでも、中断明け早々に、同じようにインローを蹴りました」

KID戦を振り返る魔裟斗 photo by Murakami ShogoKID戦を振り返る魔裟斗 photo by Murakami Shogoこの記事に関連する写真を見る――普通の選手なら、同じ箇所を蹴ることを躊躇しそうですが。

「それだと負けちゃうんですよ。僕は『ピンチの時こそいけ』というのが信念で。『K-1 WORLD MAX 2008』の決勝でアルトゥール・キシェンコと戦った時も、2ラウンドで倒されてから、フラフラになりながら打ち合いにいきました。相手はチャンスとわかれば当然倒しにきますから、気持ちでピンチに見せないことが大切なんです。

 KIDはスピードがあって出入りが激しい選手でしたから、ローキックを蹴らないと足を止められなかった。でも、KIDがすごかったのは、それでもどんどん踏み込んできたこと。結局、彼の足を止めたのは、ローキックじゃなくてヒザ蹴りでしたね」

――2ラウンドにはダウンを奪い返して、結果は判定勝ちでした。2018年9月にKIDさんが亡くなったあとの葬儀では、『キャリアの中で、もっとも素直に楽しめた試合だった』と話されていましたが、魔裟斗さんにとっても特別な試合だったんですね。

「2009年に引退したあと、『KID戦が一番印象的だった』と声をかけられることが多くて。今振り返っても、本当にスリリングな試合で、アドレナリンがバンバン出ていましたね。KIDのスピードがある攻撃をよけながら、僕がカウンターを合わせていく。純粋に面白かった。先ほども言ったように、キャリアも階級も違うのに、ダウンを取られるとは思っていなかった。『やっぱりKIDは"持っている"な』と思いました」

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