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「つないだ手は離さない」。
ボクサー栗生隆寛を引退まで支えた父の思い (6ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO


 高校を卒業した粟生は、帝拳ジムの門を叩く。

 広幸さんは練習ノートを記録することもやめ、粟生の後援会長となった。

「もはや私にできるのは、あいつの試合会場の客席を一席でも多く埋めることくらいですからね」

 粟生は2003年9月にプロデビューし、2008年10月にWBC世界フェザー級王者オスカー・ラリオス(メキシコ)に挑戦。

 試合は、粟生が4Rにカウンターでダウンを奪うも、意地を見せるチャンピオンを仕留めきれず、判定にもつれる。12R終了のゴングが鳴った瞬間、両腕を高く突き上げるチャンピオンと対照的に、粟生は右腕を申し訳なさげに肩の高さまで上げた。その瞬間を、粟生が振り返る。

「終わった瞬間、『勝った!』と確信が持てなかった。半信半疑、どっちかなって。判定を待つ間、いろんなことが頭をよぎって。試合を日本でやっている、ホームアドバンテージみたいなものが多少でもあるとしたら勝てるかな、とか」

 しかし、1−2の判定で粟生は敗れる。ホテルの部屋に戻った粟生は、ひとり泣いた。

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