2020.06.26

阿部一二三時代を確信する戦慄の一本勝ち。
18歳で五輪メダリストに圧勝

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Sho Tamura/AFLO SPORT

東京五輪&パラリンピック
注目アスリート「覚醒の時」
第29回 柔道・阿部一二三
五輪メダリストを圧倒した全日本選抜柔道体重別選手権(2016年)

 アスリートの「覚醒の時」──。

 それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。

 ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。

 東京五輪での活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか……。筆者が思う「その時」を紹介していく──。

2016年の体重別選手権男子66キロ級で海老沼匡を圧倒した阿部一二三(写真右) あらゆるスポーツにおいて、新旧交代の瞬間はいつの時代も残酷だ。柔道界でいえば、2016年の全日本選抜柔道体重別選手権男子66キロ級がそうだった。戦慄を覚えるような結末は、66キロ級の、いや日本柔道の次世代のエースが誰なのかを暗示させた。

 準決勝の畳に上がったのは、2012年ロンドン五輪の同階級銅メダリストである海老沼匡(パーク24)と、日本体育大学に入学したばかりの阿部一二三だった。

 左組みの海老沼に対し、右組みの阿部。喧嘩四つとなる両者の組み手争いは、兵庫・神港学園を卒業したばかりの18歳がリードする。阿部が開始すぐに袖釣り込み腰で海老沼をヒヤリとさせると、次には巻き込むような大外刈りを仕掛け「技有」を奪う。すぐさま袈裟固めで抑え込む。が、海老沼がまさしくエビのように体を動かし、難を逃れる。