【ボクシング】山中慎介が激白「アイツと戦えるなら階級を上げてもいい」 (2ページ目)

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro  是枝右恭●撮影 photo by Koreeda Ukyo

松原 僕は、初防衛戦のビック・ダルチニアン(オーストラリア)戦が、山中選手の試合で一番好きなんです。冷静に距離を保ち、雰囲気に飲まれないクレバーな試合展開が山中選手らしくて。

山中 たしかに、あの試合(12回判定勝ち)は思い通りに戦えましたね。

松原 ガンガン前に出てくるファイターで、「レイジング・ブル(怒れる雄牛)」と呼ばれるダルチニアンのプレッシャーは想定内でしたか?

山中 試合中はそれほどプレッシャーを感じませんでしたね。たしかに、ラスベガスの大舞台を何回も経験している雰囲気やオーラはありましたけど。ただ、ゴングが鳴る前のほうが怖かったんです。

松原 そうなんですか?

山中 向こうの陣営は、めっちゃごっつい奴ばかりで、しかも威圧してきたんで(笑)。

松原 山中選手の最大の魅力を、僕は「ギャップ」だと思っているんです。

山中 ギャップ、ですか?

松原 昨年10月のスリヤン・ソー・ルンヴィサイ(タイ)との防衛戦で、ダウンを奪った後、レフェリーにニュートラルコーナーに行くように指示されながら、対戦相手に歩み寄ってしまってカウントが止まってしまいましたよね? その結果、対戦相手に23秒もひざをついて休ませてしまい、具志堅(用高/元WBA世界ライトフライ級王者)さんに並ぶ世界戦6連続KO勝利を逃してしまいました。

山中 レフェリーに1回注意された時点で、止めておかないといけませんでしたね。反省しています。ただ、本能的なものが出てしまったんですよね。

松原 そう、そこなんです! 専門誌に「山中選手は『キラーインスティンクト(殺戮本能)』が強いため、理性を制御できなかった」と書かれていましたけど、普段は常に冷静でクレバーに試合を運ぶ山中選手が、「ここだ!」という場面で本能がむき出しになる......。そのギャップに、僕はやられてしまうんです。

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