【男子バレー】石川祐希が肌で感じた日本の進化 「2チーム分の戦力」はこうしてできあがった (3ページ目)
【キャプテンとして戦う宿命】
石川は凛とした声で言うが、キャプテンの重みを感じさせた。そこで聞いてみたいことがあった。
――パリ五輪で上位の強豪国(イタリア、アメリカ、フランスなど)はセッターがキャプテンをすることが多いです。キャプテンにはチームを束ねることに労力を使う消耗があり、ひとりのスパイカーとしては負担になっていないですか?
石川は毅然とした様子で答えている。
「そこは監督次第だと思います。たとえば、(前監督の)フィリップ・ブランは『セッターにキャプテンをやらせたくない』というタイプでした。やっぱり、まずは監督の意向がありますね。それに、選手次第だとも思っています。その選手にリーダーシップがあるか、まとめる能力があるか。結局は、そこが大事なのかな、とは思いますね」
セッターは攻守の間にいるポジションでどこにも接続しやすい一方、アタッカーは最後に一番必要な得点を託され「そこに集中するべき」というのも合理的に思えるし、率直に言って、キャプテンはときに自我を封じ込めざるをえないこともあるだろう。
ただ、石川はキャプテンの流儀を感じさせた。
――もっと自由勝手に、石川選手にプレーしてほしい気もしますが......。
この素朴な質問に、石川は「基本的には自由にやっているんで」と闊達な笑みをもらしながら、丁寧にこう続けた。
「"キャプテンだから"というので考えることはあります。けど、それで(プレーに悪い)影響がないように、自分ではコントロールできているとは思っています。逆に、"今の代表でキャプテンを誰がやるの?"ってなると、なかなか(名前が)出てこないので、(今の代表は)みんな点を取るメンバーにリーダーシップがある、というのもあって、そこは難しいところかなと」
石川がキャプテンとして戦うのは宿命なのだろう。
何より、求心力のある石川自身の個が、日本の組織力を強化させる。イタリア戦で反撃の狼煙を上げた2セット目、彼はフェイクセットで西田にトスを託し、自らのスパイクがブロックされたあとは山本がフォローした。そのシーン自体は自らの得点につながらなかったが、日本自慢のラリーを起動させ、戦闘を戦術に、戦術を戦略に引き上げたのだ。
7月19日、VNL予選ラウンド最終戦、日本はパリ五輪で勝利したアルゼンチンと相まみえる。すべてはロス五輪へ。それこそ石川が至高の輝きを放つ舞台だ。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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