【ハイキュー‼×SVリーグ】VC長野の飯田孝雅は烏野の縁下力のように「逃げない」 大きな壁に立ち向かう
VC長野トライデンツ 飯田孝雅
(連載44:VC長野の安原大は「ゴミ捨て場の決戦」に「胸熱」 高橋藍がいた日体大で「やる気」が出た理由とは?>>)
今シーズン発足したSVリーグでは、「世界最高峰を目指す」という号令の下、各クラブは攻撃の切り札であるオポジットに有力外国人選手を補強した。ニミル・アブデルアジズ(ウルフドッグス名古屋)、フェリペ・モレイラ・ロケ(広島サンダーズ)、ドミトリー・ムセルスキー(サントリーサンバーズ大阪)、シャロン・バーノン=エバンズ(日本製鉄堺ブレイザーズ)など、総得点ランキングの上位は外国人選手ばかりだ。
結果、日本人オポジットは厳しい競争を余儀なくされているが......。
「一番手は難しい、とは思っていますけど、"チャンスは必ずくる"と思っています」
VC長野トライデンツのオポジット、飯田孝雅(23歳)は毅然として言う。身長200cmを超えるデンマーク代表オポジット、ウルリック・ダールは長野の得点源で、日本代表の西田有志、宮浦健人にも匹敵する得点を記録している。
「スタートで出られないというのは、モチベーションを高める上で難しいところはあります。でも、サーブ、ブロック、出たら何でも仕事ができるように準備して待つだけですね」
飯田はそう言って顔を綻ばせた。腹を括っているのだろう。人生、逆境を乗り越えてきた自負があるのだ。
「負けたくない」
その反骨が彼を強くしてきた。
飯田は今も、バレーボールとの邂逅を覚えている。中学校では、生徒は必ず何かの部活に入らなければならず、当初はテニス部か卓球部を候補に考えていたという。だが、小学校時代から一緒だったひとつ上の先輩に誘われ、バレーを体験した。
「1日目の体験が、めちゃくちゃ面白かったんです! 初めてだったんですが、ボールコントロールは下手ではなくて。それで(上級生に)『思い切り打つボールを取ってみる?』と聞かれて、それを戸惑わずに受けたら、ボールが綺麗に上がったんですよ。体験は3日間の予定だったんですが、その日に入部を決めました」
飯田は興奮を思い出したようにはつらつと言う。レシーブした時、背後には同じく体験に来た生徒たちが並んでいた。ひとりずつボールを受けるなか、彼の番だけ「おー」というどよめきが起こったという。その陶酔が、彼をバレーの虜にした。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。