加藤未唯が「してはいけないことをしてしまった」と語る全仏のあの出来事 涙で言葉に詰まり...「もうテニスを辞めるしかないのかな」 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • 説田浩之●撮影 photo by Setsuda Hiroyuki, Kyodo News

 サーバーである相手コートに打ち返したルーズボールが、ボールガールの肩付近に当たる。一度は主審から「警告」が言い渡されたが、相手選手たちの抗議により、スーパーバイザーやレフェリーが呼ばれる事態に発展。最終的に下された判定は、失格であった。

 その直後の加藤は、大会のメンタルヘルス担当者が「今日は会見をしなくていい」と判断するほどの精神状態だったという。翌日の会見では、涙で言葉に詰まり、中座する場面もあった。彼女の落胆は、周囲の目にも痛いほどに明らかだった。

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全仏での出来事は世界中の話題となった全仏での出来事は世界中の話題となったこの記事に関連する写真を見る── 試合後、失格の判定は厳しすぎるという声が選手間からも上がっていました。加藤さんご自身は、どのように感じていましたか?

「ボールを当ててしまった時は、『失格かも......これで試合が終わるかも』と思ったんです。でも、その直後に主審から『ワーニング(警告)』が出たので、よかったということはないのですが、ちょっとホッとしてしまって......。だからなおさら、その後の判定に落ち込んだところはあります」

── 試合後は、ロッカールームで2時間ほどひとりでいたと聞きました。どのような思いが一番大きかったのでしょう?

「あの時は、誰とも話したくないというふうに思っていました。今はこうやって話しますけど、その時は何かしゃべればしゃべるほど、あの場面を思い出したり、その時の感情も蘇ってきたので......なるべく人に会いたくないと思っていたんです。

 とにかく、とんでもないことをしてしまったと思いました。もちろん、ボールガールにボールを当ててしまったこともそうですし、やっぱり試合中にやってはいけないことをしたことで、多くの人たちに叩かれるのではないか? みんなの前に出られるような雰囲気じゃないんじゃないか......とか、そんなことも思っていました。

 自分はまだテニスを続けられるのかな? もしかしたら、もう(テニスを)辞めるしかないのかな......という思いも、ちょっと心をよぎりました。もちろん、パートナーのディラや、ディラのご両親をはじめとするチームのみんなにも悪いと思いました。でもやっぱり、一番大きな思いは、『してはいけないことをしてしまった』でした」

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