大坂なおみと母との絆、テニスの原点。「いつだって私を笑わせてくれる」 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 そのニューヨークでの初戴冠から、2年半が経った。大坂のグランドスラムコレクションは3つに増えたが、初優勝のトロフィーは母親の手によって、鍵のかかったケースに大事にしまわれているという。

「だから、そこにトロフィーがあるなんて誰も気づかないの」と娘は苦笑いをこぼすが、鍵のかかったケースに込められた母の想いを、なおみは誰よりも知っているだろう。

 コロナ禍のなかで再開されたツアーでは、母親が試合会場に来ることは再び困難になった。

 それでも、なおみの心をほぐしてくれるのは、母なのは間違いないだろう。今年2月の全豪オープンでも準決勝での勝利後に母親と電話し、その内容の一部を次のように会見で明かした。

「お母さんったら、おかしいのよ。試合後に電話するといつも、『もっとボールを相手のコートに入れなさい』って言うの。お母さんにとって、ボールのスピードとかそんなことは関係ないみたい」

◆石井琢朗の娘と久保竜彦の娘がテニス・ダブルスでコンビを組んでいた>>

 母との会話を思い出したか、彼女の口角から自然と笑みがこぼれ落ちる。きっと母親と話している時、彼女は『世界最高のテニスプレーヤー』でも『新世代のオピニオンリーダー』でもなく、公営コートでボールを追っていた、子どもの頃に戻れるのだろう。

「お母さんは、いつだって私を笑わせてくれるの」

 そう言い目じりを下げる笑顔は、欧米風に呼ぶ「ナオーミ」ではなく、日本でも馴染みやすく呼びやすい「なおみちゃん」そのものだった。

大坂なおみ、全米OP優勝「ひどい振る舞い」から多くを学んだ

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