錦織圭、完全復活の道筋に光。目に見えて変わった数値とは?
「サーブがよかったですね。そこがオーストラリアン・オープンの時との一番の違い。サーブでフリーポイントが取れたので、ストロークのリズムもよくなったと思います」
錦織圭の完全復帰への大きな一歩は、この言葉とともに始まっていた。
新たなサーブフォームに手応えを感じる錦織圭 2019年のひじの手術、そして、新型コロナ感染からの復帰後に襲われた肩の痛み......。約1年半に及ぶケガや試合勘の欠如に悩まされ、それでも「感覚が戻る日はいつか来る」と言い続けてきたその時は、3月上旬、無観客のロッテルダムで訪れた。
対戦相手は、世界19位のフェリックス・オジェアリアシム(カナダ)。
20歳の若さとパワーを誇示するかのようにボールを強打する新鋭を、錦織は時に正面から力で打ち合い、時に技で揺さぶり、突き放した。錦織のなかに点在していたパーツが突如として噛み合い、精緻に機能しはじめたかのような勝利を手にする。
その主柱となったのが、「サーブ」だった。
サーブは、錦織の最大の課題とされ続けてきたパーツだろう。2度の手術を強いられた右ひじのケガ、さらには昨年終盤のツアー離脱の原因となった肩の炎症も、サーブが原因とも見られていた。
それらケガの抜本的解決、そして「よりパワーを生むため」にも、錦織は新たなサーブフォームに取り組んだ。それが昨年末のことである。
可視的にわかりやすいのは、打つ時に肩幅ほど広げたままだった両足を、今はインパクト時に右足を軸足の左足に引き寄せている点だ。コーチのマックス・ミルヌイとマイケル・チャン、そして日本のナショナル・チームのコーチらとも相談しながら、方向性を定めたという。
「自分ではわからなかったけれど、コーチは『サーブが肩の痛みの原因だ』と言った。僕のケガの履歴からしても、時間と機会がある時に改善していかなくてはと思ったので、迷いはなかった」
変更に踏み切った理由を、本人はそう説明した。
実は、錦織のサーブを『サービスエース数』や『ファーストサーブの確率』だけで見るならば、これまでと比べ、さほど変化があるわけではない。
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