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錦織圭と父との愛情物語。
25年前の「プレゼント」と息子への願い (6ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO


「楽しむ」という言葉に示した、ささやかな拒絶反応。それはもしかしたら、遅れて来た反抗期に近い感情だったのかもしれない。

 30歳となって迎えた、今シーズン。

 錦織はメスを入れたひじのケガが完治せず、1月の全豪オープンを欠場。そのまま公式戦のコートに立つことなく、新型コロナウイルス感染拡大によるシーズン中断期に突入した。

 13歳から暮らすフロリダ州ブラデントンも、厳格なロックダウンを施行。錦織もテニスはおろか、外出すらままならない日が続いた。

 その停止したスポーツ界のなか、錦織はトップアスリートによる音声発信サービス『NowVoice』を用いて、世の少年・少女たちに次のようなメッセージを送っている。

「30歳になっても、まだまだたくさんできることが増えているし、足りないところも見えたりするので、それを楽しんでできている今っていうのは、本当に幸せなことかなと思います」

 かつて抵抗を示した「楽しい」の言葉を、彼は柔らかく口にしていた。

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