錦織圭と父との愛情物語。
25年前の「プレゼント」と息子への願い (5ページ目)
ただ、その8年後にあらためて同じような質問をぶつけると、世界のトップ10に定着しはじめた25歳は、やや異なる見解を口にした。
「子どもの頃は、親にやらされている感はありましたよ。ただそこは、すっごい難しいと思うんですよね。親が押してくれないと、子どもの力だけでは無理なところもあるし、でも、親が押しつけすぎてもダメだし。誰かが道を作ってくれないと、子どもが導かれないのかな......と」
そのように感じるようになったのは、ここ2、3年のことだとも彼は言った。
もうひとつ、この時の彼の言葉で忘れがたいものがある。それは、こちらが何気なく口にした「フェデラーは楽しそうにテニスをしている」という発言への反応だ。
「俺もよく言われるけれど......、楽しくない時に『楽しそうだねって』って言われると、あ、そう見られているんだって思う時があります。
テニスは、楽しいですよ。ただ、楽しいけれど、プレッシャーや身体の痛みとの戦いだったり、勝つために努力しているけれど、うまくいかない時のほうが多いので。楽しいは楽しいけれど、それだけでは難しいです」
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