錦織圭と父との愛情物語。
25年前の「プレゼント」と息子への願い (3ページ目)
時が経ち、父となった清志さんは、「自分の子どもたちには、そんな想いは絶対にさせまい」と誓った。
とくに、大の負けず嫌いで、テニスのゲーム性にのめり込む息子の姿に、清志さんは自分によく似たものを感じたという。だからこそ、なおのこと父は「楽しい」や「遊び心」に重きを置いて、子どもたちにテニスを教えた。
それでも、子どもたちの腕も上がり、練習に熱がこもり出すと、厳しいことを言うべき場面も増えていく。そんな時、損な役回りを引き受けたのは、4歳年長の姉だった。
圭はきつい言葉を浴びせると、萎縮してしまうところがある。その点、お姉ちゃんは適度に流しながら処理する能力がある。そう感じていた父は、息子に言いたいことも、姉に言い聞かせる形で間接的に伝えたという。
「お姉ちゃんには、ストレスだったかもしれないな」
後年、父は申し訳なさそうにこぼした。
圭が米国フロリダ州のテニスアカデミーに渡ったのも、父が描いた青写真どおりだったかもしれない。
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