大坂なおみが愛ある行動。対戦相手は「すばらしい瞬間。感謝したい」 (2ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text&photo by Ko Hitoshi

 試合後の握手を終えて大坂は、前代未聞の行動に出る。ガウフのベンチに歩み寄って、一緒にオンコートインタビューを受けることを勧め始めたのだ。ガウフは、自分が人前で涙を見せるタイプの人間ではないと断った。だが、大坂は、「シャワーで泣くよりもいい」と説得し続けて、ついにガウフが大坂と一緒にインタビューに応じることを承諾した。

「オンコートでは最悪の敵であっても、オフコートではベストフレンドであるのがアスリートの定義だと私は考えていますが、彼女(大坂)は今夜それをやってくれたんだと思う。もちろん負けてがっかりはしたけど、あの瞬間を体験できてよかった。すばらしい瞬間だったので、なおみに感謝したい」

 大坂にもUSオープンで涙を流した苦い経験がある。初出場の2016年大会と2017年大会でいずれも3回戦で惜敗して、試合後の会見であふれる悔し涙を止めることができなかった。そんな自身の経験を踏まえ、「彼女(ガウフ)はまだ若いのに、多くのこと成し遂げていることに気づいてほしい」という大坂なりの気配りであった。

 ただ、オンコートインタビュー中に、ガウフだけでなく大坂も泣き始めたことは、年下のガウフにとっても予想外のことだった。

「なぜ彼女(大坂)が泣いているのかわからなかったわ。あなたは勝ったのに、って(笑)」

 自分も一緒に泣いてしまうのは、いかにも心優しい大坂らしいエピソードではあったが、大坂はガウフの潜在能力をもちろん認めている。

「彼女(ガウフ)は、試合での動きがすごくいい。すごくいいサーブも打てる。彼女が上達していくのがとても楽しみです」

 そして、向上心の塊のようなガウフは、いつか大坂に追いつき追い抜きたいと目を輝かせ、しっかり次の戦いを見据えている。

「今日学んだことを活かしていかないといけない。彼女(大坂)は、現在トップにいます。そのレベルに、そしてトップ10になるために私がすべきことはわかっています」

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