大坂なおみはメンタル安定。全米敗戦を糧にアジアシーズンで巻き返す

  • 神 仁司●文・写真 text&photo by Ko Hitoshi

 USオープン(全米)4回戦で、第1シードの大坂(WTAランキング1位、8月26日づけ/以下同)は、第13シードのベンチッチ(12位・スイス)に5-7、4-6で敗れて2連覇への道は閉ざされた。

4回戦で敗れ、観客の声援に手を上げてコートを去った大坂なおみ4回戦で敗れ、観客の声援に手を上げてコートを去った大坂なおみ 大坂なおみのディフェンディングチャンピオンとしての戦いが終わった。センスあふれるベリンダ・ベンチッチ(スイス)に苦戦することは十分予想できたが、世界1位の選手として臨んだ大会であったことを踏まえると、この結果に物足りなさもあったと言える。

「もちろんこの大会のタイトルをディフェンドしたかった。悲しいです」

 こう語った大坂は、ツアーレベルで2連敗中のベンチッチに、第1セット第1ゲームでいきなりサービスブレークをされ、容易な展開にはならないことを予感させる出だしとなった。

「私は大きなパワーを持っているわけではありません。でも、対戦相手のゲームを本当によく読めるのです。ボールを早いタイミングで捕らえて、予測していくのです」と言うベンチッチは、各ショットの威力では大坂に劣るものの、チェスのように二手三手先を読み的確な組み立てで大坂を追い詰めていった。

 大坂の武器であるビッグサーブに対して、ベンチッチはリターンでベースラインの中にステップインしながら、ライジング気味のリターンで時間を奪ってプレッシャーを与えた。

 また、大坂がラリー中に攻撃を仕掛けても、読みのよいベンチッチは、的確にポジションに入ってディフェンスし、その返球が大坂サイドのベースライン付近に深く入って反撃に転じることができた。

 テニスが決してパワーやスピードだけで勝てる競技ではないことを、あらためてベンチッチが証明した。それは、ベンチッチの才能を認めたマルチナ・ヒンギスが、約20年前に天才的な組み立てと予測で、ウィリアムズ姉妹のパワーゲームを攻略したことを彷彿させる。

「今日は正直動きがあまりよくなかった。ひざ(の痛み)によって、(プレーの)動きに関して少し悩まされた」と振り返った大坂は、前哨戦のWTAシンシナティ大会で痛めた左ひざにサポーターをしてプレーを続けていた。第2セット第5ゲームをラブゲームでベンチッチにサービスブレークされたあと、大坂は、痛み止め薬を服用してプレーを続けたが、逆転する力は残っていなかった。

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