錦織圭が西岡良仁を強くした。勝者の哲学を伝える「ヒーロー」の宿命 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 そのボールの行方を見届けると、西岡は被っていたキャップをはたき落とし、両手で顔を覆いながら、勝利の味を噛み締めた。

 試合直後に西岡を祝福した錦織は、会見時にもあらためて、「彼の成長をうれしく思う」と言った。

 自分の存在が、後進をはじめとする周囲の人々を強くするのは、"ヒーロー"の宿命とも言えるだろう。試合勘の欠如や、体調不良が不安材料なのは間違いない。それでも、来たる全米オープンに向け、「練習はいい形でできているので、しっかり準備したい」と威厳は失わなかった。

 一方の西岡には、歓喜に浸る間もなく、すぐに次の戦いが控えている。

 対戦相手は、新時代の旗手のひとりとして、西岡に危機感と刺激を与えた20歳のアレックス・デミノー(オーストラリア)。錦織との試合を通じ、「自分の成長に、またつながる」と確信したプレーの感覚と自信を携えて、躍進の風を掴む彼は、今登る山の頂きを目指す。

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