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大坂なおみ、「憧れのビーナスに
勝てたんだから」と笑顔で今季終了 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 大坂が覚えたその悔いは、コーチのデイビット・テイラーが抱えた、もどかしさでもあった。

「今日の試合で、彼女はエネルギーや情熱を発揮することができなかった。テニスの問題ではない。彼女は勝てるテニスをすでに身につけているんだ。なのに、それを試合で出せないことが多い。それがファンにとっても、そしてコーチである自分としても、モヤモヤする点なんだ」

 一気に吐き出したテイラーは、自分を落ち着けるように少し間を置き、ポツリと言った。

「もちろん、彼女自身にとってもね......」

 選手とコーチが覚える歯がゆさとは、「技術面では、去年よりはるかに上達している」との共通認識と、現実の狭間で生まれる残滓(ざんし)でもあった。

「サーブが確実によくなったし、フォアハンドも間違いなく上達している」

 自信に満ちた口調で大坂が言えば、テイラーも「フォアハンドはよくなったし、セカンドサーブも上達した。ビーナス戦でも示したように、なおみはトップ10に比肩するプレーをできる」と、選手の手応えを裏付けた。

「ただ......」と、テイラーは続ける。

「テニスというのは、1週間におよぶトーナメントで争う競技だ。グランドスラムなら2週間。優勝するには5~7試合勝たなくてはいけない。しかし今大会の彼女は、ビーナス戦がすべてであるかのように捉えてしまった。

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