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松岡修造いわく「相性は悪くない」。
錦織圭が苦手な芝を克服するカギ (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

「(松岡)修造さんには、いつも『芝は合っている』と言われるんですが......」

 芝を得意とした大先輩にそう説き聞かせられていることを、錦織も苦笑いまじりで明かす。

「試合で勝っていって、いいテニスができてくれば、より好きになるかもしれません。(ウインブルドンの)歴代の優勝者を見ても、(アンドレ・)アガシや(レイトン・)ヒューイットら、自分のプレースタイルに近い選手もいるので」

 リターンを武器とした先達たちと、自らを重ねることで彼は、芝で躍進する可能性を見い出そうともしているようだった。

 また、準優勝した2014年の全米オープンに代表されるように、自らへの期待値の低さがプレッシャーなどを取り除き、好結果につながることもあるだろう。なにしろ、この2年前の全米時の錦織は、大会開幕の3週間前に足裏の"のう胞"摘出手術を受け、直前まで出場そのものを悩んでいたほどだったのだから。

 ウインブルドン――。それは多くの選手にとって憧れの大会であり、その憧憬の強さが時に、不必要な力みにつながることもあるだろう。果たして錦織も、もっとも早く名を知ったというこの大会に、過剰な想い入れを抱いているのだろうか......。

「いや、そこまでの執着心というか、憧れはなかったです」

 ふわりと笑って、錦織が言う。この軽やかさが、苦手意識を越える翼かもしれない。

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