女子ラグビーで人気を博した桑井亜乃の今。もう一度オリンピックに出たかった夢を、次はレフェリーとしてトライ (4ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

---- オリンピックでの悔しさはオリンピックで返したかった?

「本当にリオ五輪は悔しかったし、ラグビーが大好きだから、絶対にどこかで取り返さないといけないっていう思いがありました。だから、大きい大会が続いても休まず、クラブチームの大会でも頑張り、それが終わると日本代表合宿......と常に全力でした。

 そしてやっと大会がない期間になった時、急に気持ちが切れたというか。リオ五輪の翌年の夏、実は1カ月くらい吐き気が止まらなくなったんです。今思えば、あの時に少しラグビーから離れて休めばよかったかもしれません」

---- 結局、東京五輪には出場できずに引退されました。

「2018年にセブンズ・ワールドカップの代表から落ちてしまい、その後アジア競技会大会で金メダルを獲得しましたが、それを最後にサクラセブンズから呼ばれなくなったんです。ですが私は、最後まで東京五輪を目指しました。食事に気をつけ、体にも気を遣い、後悔のないように、その時その時のベストを尽くしてやることはやっていたつもりです。

 2019年から2021年までサクラセブンズの予備軍としてプレーし、調子のいい時期もありましたが、その期間に手術を行なうケガもあって、もう一度サクラセブンズに呼ばれることはなく、東京五輪への出場は叶いませんでしたね。

 オリンピックという大きい目標がなくなった時 、選手としてラグビーを続ける気力は残っていなかったです。会社の方や周りの人ともいろいろ相談しながら、東京五輪が終わった直後、2021年8月末日で選手としての引退を宣言しました。

◆桑井亜乃@後編につづく>>「男子ラガーマンにナメられないように。五輪史上初の偉業を目指す」


【profile】
桑井亜乃(くわい・あの)
1989年10月20日生まれ、北海道幕別町出身。幼少時から陸上を始めて、帯広農業高校時代に円盤投げで国体5位入賞。中京大学卒業後の2012年にラグビー競技を本格的に始める。2013年に立正大学大学院に進み、クラブチーム「アルカス熊谷」に加入。2016年リオデジャネイロ五輪代表。昨年8月に現役引退してレフェリー転身した。7人制ラグビーの代表キャップ32。身長172cm。

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