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ラグビー天理大、涙の初優勝。どうしても負けられない理由があった (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 藤原は素早いアタックで高速アタックを担い、松永は長短のパスでゲームメイク。そして、昨年スーパーラグビーのサンウルブズでの経験によって大きく成長したフィフィタが「周りを活かすことを意識した」というように、自分で突破するだけでなくオフロードパスで味方を走らせた。

 過去の悔しさを知る4年生の活躍によって、市川はハットトリックとなる4トライ、モアラは2トライを記録。決勝戦の歴代最多得点記録となる55得点を積み重ねた。

 そして天理大はもうひとつ、負けられない、どうしても勝ちたい理由があった。

 昨年の夏、菅平合宿に向かおうとしていた直前の8月12日のことだった。部員のひとりが新型コロナウイルスの陽性と判明。部員170名ほどが寮生活をしている天理大は、結果62名が陽性となるクラスターを起こした。

 その波紋は瞬く間に広がった。誹謗中傷の声がネット上で広がり、ラグビー部員以外の学生がアルバイトを拒否されたり、教育実習の受け入れが中止へと追いやられた。

 陽性となった選手は病院やホテルに隔離され、約1カ月間、まったく練習ができなかった。小松監督は「いつ再開できるか、本当に先が見えなかった」、松岡キャプテンは「今年のチームは練習だけで終わってしまうのか......という不安もあった」と振り返る。

 それでも、大学や天理市のサポートもあり、ラグビー部員以外に陽性者が出ることはなかった。小松監督は「全員ががんばって元気になって、大学が収束宣言を出してくれた。活動が再開できたのは、いろんな人たちのおかげです。大学関係者はもちろん、地域をあげて応援していただいた」と謝辞を述べた。

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 9月以降、ラグビー部は消毒を徹底し、寮内ではソーシャルディスタンスを取ってマスクを義務化。部員の3分の1にあたる選手は大学が借り上げたマンションに移り、食堂に入る人数も制限した。カラオケも禁止となり、部員たちは特別な理由がないかぎり天理市から出ることはなかった。

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