2017.10.02

水をかけられ、バッシングを浴びた
城彰二を救った「カズの言葉」

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun

私が語る「日本サッカー、あの事件の真相」第2回
W杯3連敗。成田空港「水かけ事件」~城 彰二(3)

(1)『日本が初出場したW杯。帰国した城彰二を襲った「あの事件」に迫る』から読む>
(2)『惨敗のW杯、日本代表へのバッシングが、なぜ城彰二に集中したのか?』から読む>

 日本が初のW杯出場を果たした1998年フランス大会。結果は3戦全敗に終わった。

 それでも、新東京国際空港(現・成田国際空港)の到着ロビーには、多くのファンやサポーターがフランスから帰国してきた日本代表を出迎えていた。「よくやった」など好意的な声が飛んでいたが、選手たちに笑顔はなかった。結果を残せず、自らの不甲斐なさに打ちひしがれていた城彰二も、ややうつむきながら出迎えのファンの間を歩いていた。

帰国した空港で飲料水をかけられた城彰二(中央)。photo by Kyodo News そのときだった。

 いきなりペットボトルが飛んできた。口が開いたペットボトルから水が勢いよく飛び散り、城のスーツに降りかかったのだ。

 すぐさま、城の後方にいたサッカー協会の広報担当がすっ飛んできた。怒号が飛び交い、城の後ろにいた平野孝はペットボトルが飛んできた方向を睨みつけた。広報担当はそのまま城をガードしながら出口に向かい、ペットボトルを投げた男はすぐに警備員に取り押さえられた。

「水をかけられたときは『なんだよ』って思ったよ。たぶん、普通の精神状態なら『ふざけんな』って怒っていたと思う。もしかしたら、殴り合いになっていたかもしれない。でも、そういう精神状態じゃなかった……」

 フランス滞在中、日本中の騒ぎはチームに送られてきたFAXなどで、城もなんとなくわかっていた。結果を出せなかった”エース”に対して、世間の風当たりが強いことも認識していた。

 城は「そういう精神状態じゃなかった」と語ったが、結果を出せなかったことに責任を感じていて、水くらいかけられても仕方がないという気持ちがあったのだろう。相当悔しかったはずだが、その場でそういう表情を見せることなく、悔しさをグッと噛み締めて、あえて平静を装った。

 そのときの気持ちは、”エース”という立場となって、想像もつかないような苦しみを味わった者にしかわからないものだった。