ラグビー天理大、涙の初優勝。どうしても負けられない理由があった

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 ついに関西の「黒衣軍団」が壁を打ち破り、新たな歴史を刻んだ。

 1月11日、東京・国立競技場で第57回ラグビー大学選手権の決勝が行なわれ、関西5連覇中の天理大が早稲田大(関東対抗戦2位)に55−28と快勝。8トライの猛攻を見せて昨年の王者を圧倒し、3度目の決勝進出で悲願の初優勝を飾った。

天理大の初優勝に大きく貢献したフィフィタ天理大の初優勝に大きく貢献したフィフィタ 関西勢としては、平尾誠二、大八木淳史らを擁して3連覇を達成した同志社大以来。実に36大会ぶり、2校目の関西大学王者が誕生した。

 天理大のキャプテンFL(フランカー)松岡大和(4年)は、優勝カップを東京の空に高々と掲げた。

「メンバー23人が身体を張ったのもそうですが、メンバー外のみんなが今日まで協力してくれた。天理大ラグビー部員、この4年間サポートし続けてくれたみなさん、先輩たちが培ってきたもの、全員がいい準備してきた結果、今日、優勝できたと思っています!」

 奈良県にある天理大にとって、東京は「鬼門」の場所だった。

 2011年度の初の決勝では帝京大に、2年前の2度目の決勝では明治大に、そして昨年度の準決勝では早稲田大に力負けした。また、天理大にとって新・国立競技場は初めて戦うスタジアムだった。

 2日前に東京入りして前日下見を行なったが、選手たちの心の中には不安がよぎっていたという。昨季の日本代表候補50人にも名を連ねたCTB(センター)シオサイア・フィフィタ(4年)は寝る前、「明日、自分がいらんことしたら負ける」と、自身のノックオンで終わった2年前の決勝戦を思い出してしまった。

 そんな負の呪縛を打ち破るべく、松岡キャプテンは「よっしゃー!」と誰よりも大きな声を響かせて、国立のピッチに入場した。

 ただ、松岡が「全員に勝つマインドがあった」というように、今季の天理大の選手たちには試合を通して積み上げてきた自信があった。

 先発15人中5人が2年前の明治大に17−22で負けた決勝の舞台に立っており、先発15人中10人が昨年度の準決勝で14−52と敗れた早稲田大戦に出場していた。天理大の小松節夫監督は「過去の決勝に出たチームと比べても、今回の選手は経験値が高い。彼らは1年生から3回(大学選手権で関東勢に負ける)悔しい思いをしていた。決勝にかける思いが過去2回とは違った」と語る。

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