五郎丸は日本での放送時間を気にしていた「サモア戦がラストチャンス」 (4ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 築田純●撮影 photo by Tsukida Jun

――さて、あと4カ月ほどでラグビーワールドカップが始まります。アジアで初となる日本開催です。日本代表にはどんな期待を。

「4年前のイングランド大会というのは、ほとんどの人がテレビでしか観ていません。幻想じゃないですけど、そういう世界に近いものがあると思うんです。でも、今度は日本開催ということで、ナマで見る日本の方がたくさんいらっしゃると思います。そんな人たちに衝撃を与えてほしい。もう、僕らの"奇跡"という文字を消してほしいですね」

――決勝トーナメント進出のポイントは。

「やっぱり目標を(2戦目の)アイルランドに置くべきですね。前回、我々もプールでトップチームの南アに置きました。絶対、"打倒!アイルランド"です」

――当然、初戦のロシア戦は必勝ですね。

「開幕戦も重要だと思います。勝って当然みたいな空気がありますが、自国開催のプレッシャー、初めてワールドカップを体験する選手もたくさんいるわけです。僕らは、多くの日本人が注目していないようなところでワールドカップを戦っていたので、その時とは比較できないですよね。状況が違い過ぎて。その中で結果を出していくことはかなりきついことだと思います」

――結果を出すためには。

「準備しかないですね」

――プラスの材料は。

「僕らの時と違い、今はサンウルブズがあります。そこで世界のトップレベルの試合ができます。調整ですね。いろいろと高いレベルでテストができるのは、4年前にはなかったことです。日本代表にとって、ポジティブなところだと思います」

ーー大会の試合以外で期待していることは。

「ラグビーを見るスタイルという点で、日本のオリジナリティができればいいと思っています。いまの日本の観戦スタイルはイングランドの観客をマネしていると思うんです。静かにするというのは、イングランド人はそれが自然なんです。でも、フランスにいけばラッパを吹いている人もいるし、オーストラリアにいけばブーイングをする人もいる。ニュージーランドもまた、違う。日本でワールドカップがあることで、日本独自の観戦スタイルができればすごく面白いなと思います」

――ところで、自身のプレーはいつまで。

「とりあえず、あと2年は間違いなくやります。35の年齢になりますね。(年齢)きましたね、けっこう。ははは」

 日本代表の背番号15を背負ったFB(フルバック)五郎丸歩。

2015年のラグビーワールドカップ・イングランド大会では濃密な時間を過ごし、残酷な結果に泣きもしたけれど、だから大きくもなれた。日本ラグビーのための使命感は、富士山と太平洋をのぞむレストランでのインタビューの率直な言葉ににじんだ。

 それにしても、五郎丸の語りは飛躍的によくなった。じつは、話題は大リーグを引退したイチローにも及んだ。「イチローさんがすごいところは、感覚を言葉にできて、人に伝える力、これってほんと、一流だなと思います」

 五郎丸は、「僕は(RWC直前に)感覚で過ごしたくないなと思ったので、日記を書き始めたんです」と教えてくれた。

 自己分析、感覚の言語化。これもアスリートとしての成長とは無縁ではないだろう。

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