2019.04.28

五郎丸は日本での放送時間を気にしていた
「サモア戦がラストチャンス」

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 築田純●撮影 photo by Tsukida Jun

レジェンドたちのRWC回顧録② 2015年大会 五郎丸歩(後編)

 日本ラグビー史に燦然(さんぜん)と輝く2015年のラグビーワールドカップ(RWC)。

 日本代表は、初戦の南アフリカ戦に勝利し(34-32)、番狂わせを演じた後、中3日で迎えたスコットランド代表には敗北(45-10)を喫した。だが、次戦の難敵サモア代表には完勝(26-5)し、南ア戦が奇跡でなかったことを証明した。決勝トーナメントへの道が断たれた後のアメリカ戦(28-18)でもプライドを示し、結局、3勝1敗の好成績を残した。

今大会のラグビーW杯は、NHKのナビゲーターに就任した五郎丸歩

 目標を達成することはできなかったが、日本代表は世界のトップクラスにも伍していけるという自信を得ることはできた。一躍、「時の人」となった五郎丸歩は、プール戦4試合すべてに出場し、1トライ7ゴール13PG(ペナルティーゴール)の合計58得点をマークした。五郎丸は、最後の米国戦の試合後のテレビインタビューで、「複雑ですね」と漏らすと、言葉を詰まらせ、左の手の平で顔を覆ったのだった。

 あれから4年が経った。あの時の涙の理由を聞けば、「ほんと、いろいろな感情が交じっていました」と静かに言った。

「自分が代表を引退するというのを自分の中で決めていたし、目標であるクオーターファイナルに届かなかったし…。一番、心にあったのは、このチームがこれで解散してしまうという寂しさでした」

 あと一歩だった。あと一歩。決勝トーナメントに勝ち上がれば、8万2千人収容のトゥイッケナムスタジアムで準々決勝を戦うことになっていた。

「やっぱり、トゥイッケナムでやりたかったですか」と聞いた。

五郎丸は視線を遠くに運び、つぶやく口調で続けた。「やりたかったですね」