【Bリーグ】比江島慎、スターの証明 宇都宮ブレックスを優勝に導いた逆転3Pの凄み
少なくとも外から我々が見る「比江島慎」という選手の表情は、ほとんどの場合で一緒だと言っていい。
それは、控えめな彼を如実に表わす、うっすらとした笑みだ。
5月27日に行なわれた宇都宮ブレックスと琉球ゴールデンキングスのBリーグファイナル最終戦。終了直後に目にした彼は、雄叫びを上げ、顔には涙と満面の笑顔があった。
「宇都宮ブレックスは本当にすばらしいチームですし、年々Bリーグが盛り上がってきているなかで、歴史に刻まれるような優勝が今シーズンできたことは、非常に大きく、すごくうれしいです」
試合直後のコート上でのインタビュー。比江島はいつもよりも少しだけ高揚を感じさせる口調で、こう語った。
ここぞの場面で逆転3Pを沈めた比江島慎 photo by Nikkan sports/AFLOこの記事に関連する写真を見る もっとも、試合の展開と宇都宮の勝利をくまなく見ていたならば、そしてそこへ至るまでの彼らの抱えた悲壮な思いを知っているならば、チーム一のスター選手である比江島が悲喜こもごもの表情をしていることに納得こそすれ、驚く者は多くなかったに違いない。
いや、それだからこそ、比江島の感情があそこまであふれ出てしまっただろうか。
Bリーグの頂点を狙うポストシーズンで、比江島のシュートは好調だとは言えなかった。過去ここまで3P成功率が40%を超えたシーズンを6度記録し、今シーズンは同カテゴリーで2年連続してB1トップとなった。それなのに、である。
ファイナル第1戦では5得点、第2戦では8得点。比江島らしいプレーは、なかなか見られなかった。
第3戦、試合開始前のウォームアップ。ここでも比江島の3Pはよく決まっていなかった。フリースローの練習すら外していた。その様子をどれだけの人が見ていたかは定かでないが、宇都宮を推す人たちにとって、それは不穏な光景だった。
案の定、試合が始まっても、比江島のシュートがリングの間をとらえる場面はなかなか訪れない。レイアップへ行けばブロックされ、得意のドリブルから波長を戻そうとすればボールを失ってしまうなど、なかば空回りを引き起こしてしまっていた。
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著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。