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【Bリーグ】比江島慎、スターの証明 宇都宮ブレックスを優勝に導いた逆転3Pの凄み (2ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

【性格的に追い込まれないと...】

 しかし、最後に「眠れる獅子」は目を覚ました。

 第4クォーター序盤、レイアップと3Pを立て続けに決めたことで心理的な余裕ができたのか、比江島はその後もドライブからの難しいフローターを決めた。時にバスケットボール選手に対して気まぐれなリングは、行き詰まる勝負の局面で比江島に味方した。

 そして宇都宮が1点ビハインドで迎えた、試合時間残り30秒強の場面。D.J・ニュービルからボールを受けた比江島は、左のコーナーから逆転の3Pをリングにねじ込んだ。

 文字にすると、なんとも淡白だ。

 だがこの場面、比江島をオープンにさせるために、40歳のビッグマン竹内公輔が衝立となって相手のマークを引き剥がす役割を担っていた。また、その直前にもニュービルにドリブルでボールを進めてもらうために、やはり同じように衝立役を買って出ている。

 これらのプレーの直前に、タイムアウトなどで話し合う時間があったわけではない。それなのに彼らは、図ったかのように連係したプレーを決めてみせた。試合を決定づける相当な重圧の場面で、しかも第4クォーター前までシュートがまったく入っていなかった比江島に、そのプレーを託したのだ。

 年月をかけて積み上げてきた宇都宮のバスケットボールが、優勝の行方が左右する際のところで発揮されたのは、あまりに印象的だった。

 もちろん、それを決めきったのは、「やはり比江島」と言うべきだろう。第4クォーターだけで14得点。打った5本のシュートすべてを決めてみせた。並の選手ならばそう簡単に立ち直れるはずもない不調から勝負どころで自然と集中力を高めてくるのは、彼が特別な選手だからだ。

「性格的に追い込まれないと、やらない性格なので」

 この3Pのシーンについて問われた比江島は、苦笑しながらそう語った。その瞬間、横浜アリーナ内の宙には「ワアッ」という笑いが舞った。それは彼の言葉どおり、崖を背中に背負ったところから脚光をかっさらう活躍ぶりだったからだ。

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