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【Bリーグ】比江島慎、スターの証明 宇都宮ブレックスを優勝に導いた逆転3Pの凄み (4ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

【君がここにいるのには理由がある】

 好調だったチームに襲った突然の訃報は、チームをより結託させた。ブラスウェル氏の葬儀の際に、比江島は「ケビンのバスケで優勝します」と誓った。

 果たして、彼らの強い思いは結実した。優勝以外は失望という重圧は、重くのしかかっていたに違いない。そんな状況下で、比江島は一番のプレーを決めてみせた。

「局面でこそ力を発揮してみせる」という言葉は、あまりに言い尽くされたスターの表現方法である。だが、土壇場で見せたあのパフォーマンスは、彼がそういった類(たぐい)の選手であることをあらためて示した。

 もっともその控えめ性格は、スターらしさとは遠い。表面上は頼りなさそうにも見える雰囲気は、多少なりとも味方に動揺を与えるのだろうか。チームメイトのグラント・ジェレットはファイナル第3戦の序盤、比江島に「自信を持ってプレーするんだ」と檄(げき)を飛ばしたという。

「僕はふだん、味方にそのようなことを言ったりするほうではないけれど、(比江島)はとても静かな男で、とても穏やかで謙虚。だからこそ僕は『君がここにいるのには理由がある。君がやらないとダメだよ』と伝えたんだ」

 生前のブラスウェル氏は、比江島のことを「NBA界のレジェンド」であるコービー・ブライアント氏(元ロサンゼルス・レイカーズ)に例えていた。今年3月からHC代行として宇都宮を牽引してきたジーコ・コロネル氏も、それをよく知るひとりだ。

 2021-22シーズンのファイナル、比江島は平均20.5得点を記録する活躍で優勝の立役者となり、チャンピオンシップ(CS)のMVPに選出された。この時の比江島の働きについて、コロネルHC代行は「彼はプレーオフを通して最高の選手でした。外国籍選手を上回るプレーでチームを優勝に牽引できるのは非常に価値のあることです」と話していた。

 そして、今回のファイナル最終戦後。コロネル氏は、最後の最後で光を放った比江島の肩に手を置きながら、「彼がなぜコービーなのかがわかったでしょう」と破顔した。その横で比江島が浮かべていた表情は、やはりうっすらとした、あるいは照れたような笑顔だった。

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