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【Bリーグ】比江島慎、スターの証明 宇都宮ブレックスを優勝に導いた逆転3Pの凄み (3ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

【自然と相手を引きつける重力】

 その一方で、仮に宇都宮が敗れていたとしても、比江島が敗因の大部分を占めていたかといえば、そうではなかっただろう。

 得点の印象の強い比江島は、たしかにファイナルを含めたこのポストシーズンで際立った数字を残していない。しかし、それ以外のリバウンドやアシスト、ルーズボールにも献身的だったし、ドリブルで攻め込んでフリースローをもらい、相手の流れを断ち切るような賢明なプレーも見せていた。

 今年のチャンピオンシップでは平均10.4得点、3Pの成功率は29.4%に終わったものの、平均3.1リバウンド、オフェンスリバウンド1.5本は、過去に出場したポストシーズンで最も多かった(同1.5スティールも2番目に高い数字)。「怖い」というよりも「やっかい」というのが、今の比江島を評するに適当だろうか。

「なんでもできます」

 この言葉は、最近の比江島から複数回にわたって聞いてきた。

 得点のみならず、ほかのプレーでも目立った活躍を見せる最近の比江島には、どこか新境地を開いた手応えを感じさせもした。

 それは今シーズン、宇都宮のヘッドコーチ(HC)に就任しながら今年2月に突如、46歳の若さでこの世を去ったケビン・ブラスウェル氏との出会いがもたらしたのかもしれない。アメリカ人のブラスウェル氏は選手の技術指導に長けた人物として知られ、かつ前向きな性格から助言者としての側面も持っていた。

「34歳になっても進化できているのは、ケビンが自信を与えてくれて、スキルも磨いてくれたから。非常に感謝しています」

 ブラスウェル氏が亡くなって初めての試合となった3月初頭、比江島は彼を偲びながらこのように語った。

 たとえば、宇都宮が勝利したファイナル第1戦の第4クォーター終盤。比江島はドリブルで中に切れ込んで相手ディフェンダーを目一杯に誘い込むと、コーナーでノーマークとなった遠藤祐亮にパス。遠藤は3Pを沈めて10点差とし、勝利を大きく手繰り寄せた。

 彼がドリブルをすれば、自然と相手は反応してしまう。比江島の最大の武器はその「重力」にあると思われるが、自身で得点ができずとも、それを生かしてチームの勝利に寄与できる。「なんでもできます」は冗談半分で言った言葉かもしれないが、あながち間違ってはいない。

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