アンカツの目に適った「3歳牡馬番付」 皐月賞とダービーで頂点に立つ馬とは (2ページ目)
横綱:クロワデュノール(牡3歳)
(父キタサンブラック/戦績:3戦3勝)
クロワデュノールをこの世代ナンバー1、つまり「横綱」と認定するのは、誰も異論はないだろう。デビューから無傷の3連勝。しかも、GII東京スポーツ杯2歳S(11月16日/東京・芝1800m)、ホープフルSと、クラシックに直結する主要レースで見事な勝利を飾ってきた。
東スポ杯2歳Sでは、馬体重がプラス24kg。明らかに太め残りだったが、それでも最後はきっちり差しきった。ホープフルSでは、その強さが際立っていた。3コーナーすぎから徐々に進出すると、直線半ばで先頭に立って、そのまま突き抜けた。
この馬のいいところは、とにかくレースがうまいこと。騎手の指示どおり、どんな競馬でもできるところがすばらしい。馬体も500kg前後と雄大。それでいて、柔らかさがあるのがいい。
また、クラシックへ向かうローテーションに余裕があるのも好感が持てる。最近の2歳戦、3歳戦はレースレベルが高くなっている分、一戦ごとの消耗が激しくなっている。それが、トライアルをスキップして、年末年始あたりのレースからクラシック本番へ直行で挑んでくる馬が増えている要因でもあると思う。その点、この馬は十分な間隔をあけて本番に臨むことができ、勝つための条件は整っている、と言えそうだ。
しかしながら、「二冠濃厚」と巷で言われているほどの評価を、自分はしていない。本当に強い馬というのは、どんなにヘタなレースをしても勝つことができるが、この馬にはそこまでの強さを感じない。もちろん、皐月賞も、ダービーも、中心的な存在であることは間違いない。ただ一方で、同馬を負かす馬が出てきても不思議だとは思わない。
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今年の牡馬戦線の特徴は、トライアル戦が有力馬の"試走"というより、例年以上に"権利獲り"優先のレースになったこと。おかげで、いずれのレースもやや低調だった。
そうした状況にあって、皐月賞はともかく、ダービーに向けて注目したいのは、既成勢力よりも、現状では無名に近い新興勢力、いわゆる力を秘めた1勝馬や2勝馬だ。そのうえで、トライアルと本番までの間隔が延びたことを考えると、GII青葉賞(4月26日/東京・芝2400m)からの出走馬が、史上初めてダービー制覇を果たす可能性もあるのではないだろうか。
安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。
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