【男子ゴルフ】2012年、石川遼は「最後のピース」を手に入れた (3ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

 石川はこのショットを決めるために、2年間ずっと努力をしてきた。練習であれば、100回打ったら100回とも成功するかもしれない。しかし切羽詰った土壇場の、それも勝敗を左右するプレッシャーのかかった場面では、その確率は極端に低くなる。その難易度の高いショットを、石川は見事に成功させたのだ。

 言うなれば、1000ピースの最後の1ピースを入れた瞬間だった。「この2年間、もう勝てないんじゃないかと思った」と涙した石川にとっては、2年間の苦しさとの決別でもあった。

 どんな絵柄かまったくわからなかったパズルを、石川は誰か(コーチ)のアドバイスを受けることなく、ついに自らピースを探し当てて完成させたのだ。この経験は、彼にとって本当に大きな強みとなると思う。そして、これから先の彼が、すごく楽しみになった。

 2013年は、いよいよ本格的に米ツアーに参戦する。そこで石川は、いまだ知らなかった世界の凄さに改めて気づくだろう。そうすると、ピースの数が1000では足りないのではないか、と思い始めるに違いない。それは、1500か、いや2000ピースかもしれない、と。

 だが、石川は1000ピースのパズルを完成させた。最後の1ピースをはめられず、完成形が見えないまま、すべてのパズルを放り出して、再び100ピースのパズルを作るレベルに戻ってしまう人間とは違う。ひとつの階段を上がれたことは、間違いなく"自信"となって、自らの体の中にしみ込んでいるはずである。次なるステージでは、その達成感と蓄積された自信を生かして、さらなる高みを目指していってほしい。

三田村昌鳳(みたむら・しょうほう)
1949年2月24日生まれ。週刊アサヒゴルフを経て、1977年に編集プロダクション(株)S&Aプランニングを設立。ゴルフジャーナリストとして活躍し、青木功やジャンボ尾崎ら日本のトッププロを長年見続けてきた。初のマスターズ取材は1974年。2012年大会で33回目となる。(社)日本プロゴルフ協会理事。

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