検索

サッカー日本代表監督の有力候補だったペジェグリーニ 多国籍軍を操る知性派のマネジメント

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

名将たちの人心掌握術(6)
マヌエル・ペジェグリーニ

 2014年ブラジルワールドカップで日本代表を率いたのは、イタリア人アルベルト・ザッケローニではなく、チリ人マヌエル・ペジェグリーニだったかもしれなかった。日本サッカー協会の技術委員は、リストに入っていたペジェグリーニと真っ先に会談していた。2010年にレアル・マドリードの監督を解任された直後のことで、引く手あまただったが、代理人と条件交渉までしていた。

 ペジェグリーニは欧州での監督業を優先し、チリ代表監督にも色気があり、結局、日本との話し合いはまとまらなかった。しかし、その後の彼は小さなクラブ、マラガを史上最高位(4位/2011~12シーズン)まで導き、サンティ・カソルラ、ホアキン・サンチェス、イスコなど選手の個性を引き出し、チャンピオンズリーグベスト8進出に導いている。その後、マンチェスター・シティではヘスス・ナバス、ヤヤ・トゥーレらに能力を発揮させ、プレミアリーグ制覇もやってのけた。

 もし日本代表を率いていたら......ついそう妄想してしまうリーダーだ。

2020年からベティスの監督を務めているマヌエル・ペジェグリーニ photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA2020年からベティスの監督を務めているマヌエル・ペジェグリーニ photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA ペジェグリーニは、欧米のグローバル企業の敏腕トップのように、異文化の人間をまとめる戦略構想やダイバーシティの活用に優れていた。むしろ、多国籍の人材を率いたときに、その個性を引き出す異能があった。国際競争力が問われる時代、彼のリーダーシップはひとつの模範だ。

 ペジェグリーニは、『欧州サッカー 名将への挑戦状』(東邦出版、ヘスス・スアレス/小宮良之 共著)のなかで、少々皮肉っぽく自らのサッカー理念をこう語っている。

「私は自分を結果主義者だと言える。たとえ悪いプレーをしたとしても、勝てば自分の心は休まるからね。しかし、サッカーは基本的にいいプレーをすることがいい結果を導き出すことにつながる。いいプレーとは、自分たちがボールを動かすこと。これは自分が現役時代、センターバックをしていたからわかることだが、ボールを持っているチームは消耗が少なく、逆に相手に持たれた場合、守備は混乱を強いられるために消耗を余儀なくされる」

1 / 3

登録は簡単! チェックを入れてボタンを押すだけ 詳しくはこちら

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

キーワード

このページのトップに戻る