検索

シメオネ流「選手たちの士気を上げるマネジメント」 叩き上げで身につけた「闘争は裏切らない」

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

名将たちの人心掌握術(7)
ディエゴ・シメオネ

 アトレティコ・マドリードのディエゴ・シメオネ監督は「闘将」のリーダーシップを纏っている。それは着ぐるみではない。自らの体内にある人生、生き様を外側に表出させて着込んだもので、彼自身が闘将なのである。

 現役時代のシメオネは、まさに"祖国を守る兵士"のような凄絶なプレーがトレードマークだった。敵チームのサポーターは憎しみを抱き、味方チームのサポーターは思わず涙した。勝負事においては一歩も引かなかった。

 シメオネは怯懦に駆られて退くことを最大の屈辱としていた。そのせいで、反則行為に及ぶことも少なくなかった。当時、女性から最高の人気を集めていたジュレン・ゲレーロのふとももをほとんど故意に踏みつけて高い声で罵倒された。どんなファウルにも抗議をしないロマーリオを小突き回し、手が付けられないほど怒らせたこともある。

 闘争こそが、彼の行動規範だった。それが監督になってからも、マネジメントの柱になっている。まさに現場叩き上げの社長だ。

2011年からアトレティコ・マドリードの監督を務めるディエゴ・シメオネ photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA2011年からアトレティコ・マドリードの監督を務めるディエゴ・シメオネ photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA 大方の想像どおりかもしれないが、シメオネは頭でっかちを嫌う。昨今の戦術理論派とはわかり合えない。「ポゼッションに意味などない」と公言して憚らなかったほどだ(現在はポゼッションが守備にもなるし、攻撃の時間を増やすことが多く勝利を収めるには必要だと捉えているが)。

 闘将は、ファンタジスタという現実感のない選手も気に入らない。驚くようなプレーをやってのけるとはいえ、あくまで闘争が土台にあってチームを勝利に導くリオネル・メッシのような選手は、最高峰のプレーヤーとしてリスペクトしている。しかし、技に溺れてしまい、守備をさぼるような選手とは折り合えない。

 その最たる例がポルトガル代表ジョアン・フェリックスだった。鳴り物入りでアトレティコに入団し、そのテクニックとビジョンは高く評価されていた。ターンするだけで優雅な舞のようで、キックは精度が高く、軌道も美しく、見事に相手の裏をかく。アクロバットなボレーなども得意とした。いわゆる、華やかな選手と言えるだろう。

1 / 3

登録は簡単! チェックを入れてボタンを押すだけ 詳しくはこちら

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

キーワード

このページのトップに戻る