検索

シメオネ流「選手たちの士気を上げるマネジメント」 叩き上げで身につけた「闘争は裏切らない」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

【「11人のメッシを揃えても勝てない」】

 シメオネはそう言って、リーダーとしては戦う姿勢を義務的に求める。

「選手たちには、歯にナイフを挟んで試合を戦うメンタリティーを持って欲しい。勝負で少しでも妥協すれば、深い穴に落ちていくだけ。底はない。ただ真っ逆さまに落ちて行く。闘う姿勢を見せなければ、状況はどんどん悪くなるのさ。だから、我々は闘志を決して失ってはならない」

 そう語るシメオネは現役時代、ダービーやタイトルを決めるような試合に滅法強かった。負けや失敗を想像することは、どの選手にも多かれ少なかれあることだろう。しかし、負けや失敗を想像するとその多くが臆病風に吹かれるのに対し、彼は敗北の屈辱に耐えられないからこそ、平常時以上の力を出すことができた。

「11人のシメオネを揃えても勝つことはできないが、11人のメッシを揃えても勝てない。リーダーの役割は、選手をひとつの集団にすることだ。さもなければ、どんな気高い理想を持っていても、勝者になれないだろう。その点、選手たちは監督を理解すべきだが、監督も選手たちを理解する必要がある。そうした相互の良好な関係のうえで、チームはようやく機能する」

 シメオネはそう言って、こう続けている。

「サッカーのピッチではいつも"今をどう戦うか"が問われる。勝ち続けるためには、柔軟な思考を持たなければならない。私はその闘争のなかに生き甲斐を感じる人間なのさ」

 まさに、現場叩き上げの流儀だ。

ディエゴ・シメオネ
1970年、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。87年、ベレス・サルスフィエルドでデビューしたのを皮切りに、セビージャ、アトレティコ・マドリード、インテル、ラツィオなどで活躍。アルゼンチン代表として3回のワールドカップに出場している。2006年、ラシン・クラブで現役を引退後、同チームの監督に就任して指導者の道へ。11年からアトレティコ・マドリードの監督を務める。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

3 / 3

登録は簡単! チェックを入れてボタンを押すだけ 詳しくはこちら

キーワード

このページのトップに戻る