上田綺世は従来の日本人ストライカーとどこが違うのか ブラジル戦逆転弾に続きハットトリック
オランダリーグで、上田綺世(27歳、フェイエノールト)がゴールゲッターとして荒ぶっている。10月19日(現地時間)のヘラクレス戦ではハットトリックを記録。ここまで9試合11得点で、得点王争いでもダントツのトップに立っている。覚醒し、得点量産態勢に入った印象だ。
「ストライカー不在」
日本サッカーは長らく、その問題に悩まされてきたが、時代を変える選手が出てきたのか――。
ヘラクレス戦でハットトリックを決めた上田綺世(フェイエノールト) photo by Pro Shots/AFLOこの記事に関連する写真を見る 3-2と世紀の勝利を挙げたブラジル戦でも、上田は"空の世界"を制してゴールを決めていた。後半26分、左CKで相手選手の前に素早く入って、豪快なヘディングをねじ込んだ。
「世界でもトップレベルの空中戦」
久保建英がそう絶賛するほどの迫力だった。このレベルの相手に、高さやパワーで勝ってゴールを決めた日本人ストライカーがいただろうか。
上田はマークを外し、助走を確保するのがうまい。その戦術的駆け引きだけで、マーカーに勝利しているところもある。
たとえばヨーロッパリーグ(EL) のアストン・ヴィラ戦も、プレミアリーグの屈強な相手をものともせず、うまくボールの軌道に入り、高いジャンプから頭で合わせていた。相手GKのブロックを押し下げるようなパワーで、ボールはゴールラインを越えた。結局、ゴールは不可解なファウル判定により取り消されたが、「ヘディングのうまさ」を感じさせた。空中で体を翻させながら確実にヒットポイントを捉え、ゴールに飛ばしていたのだ。
ただ、上田は"マークを外す"のがうまいだけでも、ヘディング技術が優れているだけでもない。もうひとつ、"屈強さ"を兼ね備えている。
たとえばブラジル戦の得点の直前のシーン。味方のハイボールに相手を背負いながら競り勝って、伊東純也に落としながら、すかさずゴール前に入ってファーに流れ、伊東のクロスを高い打点でヘディングシュートに持ち込んでいる。ボールは相手ディフェンスに当たってゴールにはならなかったが、その攻撃から押し込んで得たCKが決勝点につながった。
ひとつのプレーが秀でているだけでなく、最後のゴールの仕事までやりきれる。
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著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。







