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上田綺世は従来の日本人ストライカーとどこが違うのか ブラジル戦逆転弾に続きハットトリック (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【過去の日本人ストライカーと比べると】

 特筆すべきは、これがヘディングの話だけではないという点だろう。たとえばプレッシングやポスト役の仕事をしたあとに、強烈なミドルで叩き込む、あるいはクロスに足で合わせる、という余力があるのだ。

「動きのなかでパワーが落ちない」

 レアル・ソシエダでダイレクターなど数々の職務を歴任したミケル・エチャリは4年前、東京五輪代表時代の上田を評し、ストライカーの資質を称賛していた。

「上田は前線で積極的にボールを呼び込める。サイドに流れ、空中戦にも果敢にトライできる。必ずしも勝ってはいないが、その姿勢が前への勢いを与える。細かく見た場合、世界標準ではまだターンに改善の余地はある。しかし、ボールを受け、そこから走り、ゴールを狙う、というパワーは出色だ。

 何より上田はフットボールの本質を理解している。たとえば、彼はディフェンスと並走しながらボールを受けると、しっかりとパワーを使ってキープし、深みを作っていた。ターンして味方を使えば、得点につながることも理解している。クロスに対しても、正しいポジションと動作を選択しており、ディフェンスには嫌な存在になるだろう」

 資質的に、上田は技術も高さもパワーも、大学、Jリーグ時代から抜きん出ていた。しかし、それに甘んじなかった。若い時から欧州の第一線に身を投じ、世界中から集まった猛者を相手にしのぎを削り、素質を鍛えてきた。

 過去の日本人ストライカーでは、高原直泰、岡崎慎司、大迫勇也などが日本代表を支え、欧州でも実績を残してきた。彼らはそれぞれ個性的で異彩を放っていた。しかし、「世界」における彼らは、どちらかといえばゴールゲッターであるよりも、プレッシングやポストワーク、おとりの動きなどがフォーカスされた。岡崎はそのディテールによって、プレミアリーグ王者の称号も得たわけだ。

 上田は、日本人ストライカーの新たな可能性を見せる。今季、もしオランダで得点王に輝き、国内リーグやヨーロッパリーグで優勝の原動力になったら、確実に次のフェーズに入るだろう。ストライカーは世界的に少なくなっているだけに、希少価値も出るはずだ。

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