【欧州サッカー】リーガ最多レッドカードの「反則王」セルヒオ・ラモスは、誰よりもキャプテンにふさわしかった
世界に魔法をかけたフットボール・ヒーローズ
【第36回】セルヒオ・ラモス(スペイン)
サッカーシーンには突如として、たったひとつのプレーでファンの心を鷲掴みにする選手が現れる。選ばれし者にしかできない「魔法をかけた」瞬間だ。世界を魅了した古今東西のフットボール・ヒーローたちを、『ワールドサッカーダイジェスト』初代編集長の粕谷秀樹氏が紹介する。
第36回はレアル・マドリードで16シーズンプレーし、その間に計22個ものタイトルを手にした名DFセルヒオ・ラモスを紹介する。スペイン代表では、2012年ワールドカップと、2008年・2012年のEUROを制覇。こんなにも成功を収めたセンターバックは数少ない。
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セルヒオ・ラモス/1986年3月30日生まれ、スペイン・セビリア出身 photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る レアル・マドリードにとって頼りになるリーダーだとしても、対戦相手にすれば最も憎むべき男であり、ブーイングの対象だった。口八丁手八丁、勝利のためなら手段を選ばない。
セルヒオ・ラモスである。
言葉による威嚇と挑発、エルボー、つねる、足を踏む、唾を吐く......相手が嫌がることを徹底する。嬉々としているようにも感じられる。2017-18シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝では、リバプールのモハメド・サラーを脇固め(柔道技)のような危険なプレーで止めた。
「無慈悲で残忍。あまりにも醜(みにく)い行為だ」
サラーはひじを脱臼したのだから、当時リバプールの監督を務めていたユルゲン・クロップが怒ったのは当然だ。
しかし、セルヒオ・ラモスは意に介していない。かねてから「ひとり少なくなっても勝てるとわかっているのなら、5分で退場してもいい」と公言していた。「俺のプレーが気に入らないのなら、スタジアムに来なければいいわけだし、テレビをつけなければ済む」とも言い放っている。いわゆる「鋼のメンタル」だ。
レアル・マドリードのような名門中の名門をまとめ、異次元のプレッシャーがかかるようなクラブの先頭に立つのは、ちょっとやそっとの精神力では難しい。周囲から何を言われようと、勝利に邁進する強さが必要だ。
著者プロフィール

粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。











