【欧州サッカー】マンU史上最高のGKは誰か? ファン・デル・サールにあってシュマイケルにないもの
世界に魔法をかけたフットボール・ヒーローズ
【第35回】エドウィン・ファン・デル・サール(オランダ)
サッカーシーンには突如として、たったひとつのプレーでファンの心を鷲掴みにする選手が現れる。選ばれし者にしかできない「魔法をかけた」瞬間だ。世界を魅了した古今東西のフットボール・ヒーローたちを、『ワールドサッカーダイジェスト』初代編集長の粕谷秀樹氏が紹介する。
第35回は2000年代後半のマンチェスター・ユナイテッドを支えた「守護神」エドウィン・ファン・デル・サールを取り上げる。派手なセーブはない。それはポジショニングが正確だからだ。淡々と仕事をこなし、フィードも一級品。GKに必要な要素をすべて兼ね備えていた。
※ ※ ※ ※ ※
エドウィン・ファン・デル・サール/1970年10月29日生まれ、オランダ・フォールハウト出身 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る ハイクロスを丁寧にキャッチ。ペナルティボックスを飛び出してピンチを防ぎ、強烈なミドルも難なくセーブ。フィードは両足ともに安定していた。マンチェスター・ユナイテッドに今季加入したセンヌ・ラメンス(23歳/前ロイヤル・アントワープ)は、プレミアリーグデビューとなった7節のサンダーランド戦で、第一GKにふさわしい実力を見せつけた。
それにしても、時間がかかりすぎてはいないか。
ダビド・デ・ヘア(34歳/現フィオレンティーナ)は至近距離のシュートに神がかり的な反応を見せたものの、守備範囲が絶望的に狭かった。アンドレ・オナナ(29歳/現トラブゾンスポル)は何ひとつ取り柄がなく、今季も背番号1を背負うアルタイ・バユンドゥル(27歳)はGKに必要不可欠な要素とされる威圧感を悲しくなるほど持っていなかった。
あの名手が去ってから14年が経ち、マンチェスター・Uの最終ラインはようやく落ち着きを取り戻そうとしている。
あの名手とは、エドウィン・ファン・デル・サールだ。
オランダ代表の正GKでもあった彼は、独特の「オーラ」を醸していた。イージーミスに激高することなく、淡々と仕事をこなす。ポジショニング、コーチングは迅速、かつ的確。198cmの長身を利したクロス対応も申し分なかった。
著者プロフィール

粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。
























