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2026年ワールドカップへ欧州強豪がどんどん進化 5人交代制のフル活用と流れを変えられる選手たち (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【ポルトガルはヴィティーニャとフランシスコ・コンセイソンで逆転】

 58分の3人交代で一気に流れを変えて逆転したポルトガルの選手交代は、ジョアン・ネベス→ネルソン・セメド、ルベン・ネベス→ヴィティーニャ、フランシスコ・トリンコン→フランシスコ・コンセイソン。いずれも同じポジションの交代でシステムの変更はないが、明らかにギアが上がった。爆上がりした。

 大きかったのはヴィティーニャの登場だ。本来なら先発で出るはずのプレーメーカーだが、チャンピオンズリーグ決勝を戦った疲労を考慮したのだろう。足下に吸いつくボールコントロール、絶対的なキープ力、俊敏なドリブル、走り続ける体力......おそらく現在世界最高のMFの投入でポルトガルは本物のポルトガルになった。ビルツをマークしつつのゲームメイクというところに、ヴィティーニャの凄さを感じる。

 殊勲はフランシスコ・コンセイソン。右サイドに開いてパスを呼び込むと右足でボールを止め、すぐに左足のタッチで一気に加速、あっというまにペナルティーエリア近くまで前進し、得意の左足でファーサイドへ完璧なシュートを叩き込んだ。

 父親はポルトガル代表の常連だったセルジオ・コンセイソン。ポジションは同じウイングだがプレースタイルはかなり違う。利き足も違うし、身長もだいぶ息子のほうが低い。名前を知らなければ親子とは思わないだろう。フランシスコ・コンセイソンの特徴はなんといってもスピード、初速の速さがずば抜けていて、それが同点弾の場面で遺憾なく発揮されていた。シュートも高速でドリブルしながら、体を開いて蹴り足に体重を乗せる見事なキックだった。

 フランシスコ・コンセイソンはその後も次々とチャンスを作っている。先発のトリンコンがほとんど何もできなかっただけに交代の威力が目立ったわけだが、トリンコンは決定力に優れたアタッカーなので先発は不思議ではない。さらにこの試合では左サイドだったペドロ・ネトも本来は右サイド。右ウイングにタイプの違う3人の左利きがいるわけだ。左もディオゴ・ジョタ、これまで先発起用されていた異能のラファエル・レオンがいる。

 ポルトガルは昔からウイングの宝庫だったけれども、以前はいても使いきれなかった。現在は5人交代制を最大活用できるチームのひとつだろう。

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