マルコ・ファン・バステンが30歳で引退していなければ...「バロンドール受賞が3回だけってことはない」 (4ページ目)
【FIFAの要職に就いて理想を追求】
190cm台の大男が俊敏性を兼ね備え、175cmのモハメド・サラーや178cmのブカヨ・サカのようなサイズのFWは筋肉隆々だ。華奢なタイプのフットボーラーは減り、古き良き佇(たたず)まいなのは、唯一ルカ・モドリッチ(172cm・66kg)くらいか。ただ、彼がピッチを去る日も遠くない。かつてのアンドレア・ピルロのような、178cm・68kgのレジスタはもう二度と現れないだろう。
選手の感性と技術を重んじるファン・バステンにとって、それは許しがたい現実だ。
ヨハン・クライフに心酔するファン・バステンは、彼の残した「Don't run so much. Football is a game you play with your brains.(そんなに走るな。フットボールは頭脳を使うゲームだ)」との名言に、いたく感銘を受けている。近代フットボールのMFは1試合で10キロ前後を走ることも多々あるだけに、「Don't run so much」と言いたくもなるのだろう。
FIFA最高技術開発責任者として、アスリート色が濃くなる一方の現状に楔(くさび)を打てるだろうか。ファン・バステンは実働時間重視の前後半35分ずつの新ルールも提案した。自他ともに認める理想主義者ならではの発想だ。
ファン・バステンが歴代の名手トップ3に挙げた、ペレ、クライフ、ディエゴ・マラドーナは、感性に満ちあふれていた。彼のフットボールの理想は、そこにある──。
著者プロフィール
粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。
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