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マルコ・ファン・バステンが30歳で引退していなければ...「バロンドール受賞が3回だけってことはない」 (3ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【当時最強のセリエAでも別格】

 それでも、記憶と記録に残る偉大なヒーロー、といって差し支えない。

 ミランに8年間在籍し、優勝はスクデット3回、チャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)2回。トヨタカップは1989年・1990年と連覇し、ライカールトとフリットによる「オランダ・トライアングル」を日本のサッカー専門誌は毎号のように大特集を組んでいた。

 また、個人タイトルも輝かしい。セリエA得点王を2度獲得し、バロンドールを3回受賞するなど、1980年代後期から1990年代中期にかけてのファン・バステンは誰もが認める「世界最高のストライカー」だった。

 アーリング・ハーランドほどの野生味はないが、芸術性で上をいく。勝負強さではキリアン・エムバペに勝り、クリスティアーノ・ロナウドのようなナルシストでもない。現役選手と比較しても遜色はない。

 世界中の強者が集結した当時のセリエAでも、ファン・バステンは別格だった。稀代のスーパースターと同時代に副社長兼CEOとしてミランの黄金期を形成し、現在はモンツァの強化担当者を務めるアドリアーノ・ガッリアーニも絶賛する。

「ケガさえしなければ、クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシと並び称される......いや、マルコのほうが上だな。バロンドールも3回だけってことはなかっただろう」

 ユニフォームを脱いだあとは、オランダ代表、アヤックス、ヘーレンフェーン、AZなどの監督を歴任し、2017年からFIFA最高技術開発責任者の要職に就くファン・バステンは、フットボールの現状を憂(うれ)えている。

「データ最優先で、選手の感性がないがしろにされている」

「メディアがフットボールに特化した用語を使いすぎた結果、新しいファンの開拓を妨げている」

「フィジカルばかりが強調され、テクニカルな選手が軽んじられている。将来を不安視せざるをえない」

 彼の言葉を借りるまでもなく、近代フットボールはアスリート色の濃い選手がますます重用されるようになってきた。

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