U-20W杯の組み合わせ抽選会延期で本大会開催に暗雲 イスラエル、イスラム諸国、インドネシア...どうするFIFA? (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【小手先の細工では回避できない】

 その後、パレスチナ問題が激化し、中東戦争が起こると、アジアの主にイスラム圏の国がイスラエルと対戦することを拒否、1974年に行なわれた投票の結果、AFCから除名処分となった。その後、イスラエルは長い間、どの大陸のサッカー連盟にも属さず、放浪が続く。ある時はヨーロッパのチームとして、ある時はオセアニアのチームとして、W杯予選を戦った。

 そして1992年、ようやくUEFA(ヨーロッパサッカー連盟)の正式メンバーに落ち着いた。ちなみにイスラエルがUEFAに加入したのは、ただヨーロッパが彼らを受け入れたからだけではない。強豪ひしめくヨーロッパに所属していれば、イスラエルはまずW杯に出場することが不可能だからだ。ヨーロッパの外に出てイスラムの国と戦う機会もほぼない。こうした配慮で、当時のゼップ・ブラッターFIFA会長は、いつもアラブ諸国、イスラム教国の票を集めていた。

 しかしここにきて、番狂わせが起こった。イスラエルの若者たちはヨーロッパの強豪国を破り、堂々と世界に出てきてしまったのだ。

 イスラエル問題をFIFAはずっと小手先の細工で回避してきたが、今回はもう避けては通れない。もし将来、W杯でイスラエルが出場権を手に入れたらどうなる? イスラム各国がイスラエルと対戦することを拒否したならどうする? 今回の決定は、その指針となっていくだろう。

 一方でインドネシアの大会組織委員会は、今回の抽選会を中止することで、開催権返上を求められるのではないかと恐れ、政府に戦略的対応をすることを望んでいる。組織員会のある人物は言う。

「この大会を開催するため、2019年から、我々は多くの準備と犠牲を払ってきました。ですから今回の中止は大きな重荷になります。この話を聞いた時は悲しくさえありました」

 彼らはすでに大会のロゴもマスコットも、公式ソングも発表している。

 いずれにしても、この大会をどうするのか、FIFAは早急に決断しなければならない。開幕までもう2カ月を切ったというのに、まだ組み合わせも決まっていないし、記者の取材申請も始まっていない。自分のチームがいつどこでプレーするかがわからなければ、サポーターもチケットを買えない。

 何事もなかったようにこのまま大会を開催するのも異常だが、これほど直前になって中止や延期、もしくは代替国での開催を決めるのも異常だ。FIFAの対応を注視していきたい。

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