U-20W杯の組み合わせ抽選会延期で本大会開催に暗雲 イスラエル、イスラム諸国、インドネシア...どうするFIFA? (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【なぜイスラエルがヨーロッパ代表に?】

 いつものように、FIFAはこうしたデリケートな政治問題を前にすると、臆病者であることを露呈する。そのなかで何年も働いていたことのある私にはよくわかる。「我々はそんな勝手は許さない、正式に出場権を手に入れたチームを拒否するならば開催するな、対戦したくないなら家に帰れ」と、言いきる勇気はない。

 思えばカタールW杯でのビールのスタジアム販売の件でもそうだった。FIFAと組織委員会は販売することで合意し、両者ともそれで満足していたのに、開幕2日前にカタールはアルコール販売を禁止した。それに対してFIFAが何か手を打ったか? ノーだ。彼らはサポーターが困ろうが、どう思おうが、関係ない。

 ただし今回、もしFIFAがインドネシアの主張をそのまま受け入れ、イスラエルを排除したら、これは大スキャンダルになるだろう。また、イスラエルがイスラム教国と対戦しないよう操作すれば、大会の公平さは失われる。

 問題を回避するため、FIFA内部ではIOCのやり方を見習おうという議論もある。たとえば2021年の東京オリンピック。ロシアは国としては参加を認められずロシアオリンピック委員会の資格で参加した。そのため国旗の掲揚も国歌の演奏もなかった。イスラエルにも同じ処置をすればいい。イスラエルサッカー協会として参加すればいい。そんな意見だ。

 しかし、東京五輪でロシアがそうなったのは、ドーピング問題に対する制裁で、今回のイスラエルにはなんの落ち度はない。どうして彼らがそれを受け入れなければいけないのか。

 そもそも、なぜイスラエルはヨーロッパの代表として参加するのかを不思議に思う人もいるだろう。地理的に言えばイスラエルはアジア。もしくは、少なくとも隣接するアフリカに属するべきだろう。とにかくヨーロッパの国ではない。これには複雑な歴史と政治が絡んでくる。

 もともとイスラエルはAFC(アジアサッカー連盟)に属していた。1964年にはアジアカップを開催して優勝したこともあるし、1970年のメキシコW杯にアジアの代表として出場したこともあった。ただし、これは予選の段階で、イスラエルの対戦相手たちが次々に試合を放棄した結果でもあったが。

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