U-20W杯の組み合わせ抽選会延期で本大会開催に暗雲 イスラエル、イスラム諸国、インドネシア...どうするFIFA?

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 3月31日にインドネシアで開催が予定されていたU-20W杯の組み合わせ抽選会が延期になった。

U-20W杯への出場を決めている日本代表(写真はU-20アジアカップ準決勝)photo by AP/AFLOU-20W杯への出場を決めている日本代表(写真はU-20アジアカップ準決勝)photo by AP/AFLOこの記事に関連する写真を見る 本大会は5月20日から6月11日まで、ジャカルタをはじめ6都市で開催され、24チームが参加する予定だった。ところが抽選会が行なわれるバリ島の知事が、出場国のひとつであるイスラエルのチームおよび関係者が抽選会に参加することを拒否したのだ。また、パレスチナとの紛争を理由に「イスラエルを大会から排除」するようスポーツ省に求めたという。その他のいくつかの州の知事もこれに追随した。

 インドネシアはU-20W杯の開催国に決定した時、「いかなる国が出場権を手に入れようと、参加を認める」というFIFAのルールを受け入れている。すべての国の参加権は保証されているはずだった。しかしイスラエルが出場を決めると、憎しみと差別の感情が噴き出した。

 3月初めには首都ジャカルタで、デモ隊がインドネシアとパレスチナの旗を振りながら、イスラエルの参加を認めないよう要求しデモを行なっている。インドネシアの人口はイスラム教徒が過半数を占めている。ほとんどは穏健なイスラム教を信仰しているが、近年は過激な保守主義が台頭し、政治にも浸透しているようだ。

 これに加えて、イラクやチュニジアなどのイスラム諸国が、大会でイスラエルと対戦することへの拒否を表明し、暗にイスラエルの大会からの排除を訴えている。イスラエルはU-19ヨーロッパ選手権で準優勝し、正式な手段でW杯出場の権利を手に入れたというのだが......。

 こうしてFIFAは、近年、最大の問題に真っ向から対峙することになった。

 FIFAは少なくともこの10年、ずっと「政治がピッチに持ち込まれてはいけない」「サッカーは政治とは無関係」と主張してきた。筆者はFIFAがこの主張を守ることを期待した。しかしFIFAは抽選会を延期した。表向きの理由は、24チームの代表の安全が確保できないためだ。その一方で、彼らは延期を決定する前に、イスラエルに「抽選会に来ないように」と伝えている。

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