現役引退の元ブラジル代表ジョーに名古屋グランパス退団時に何があったのか。ブラジルへ突如帰国したその言い分とは? (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【いわゆる悪童ではない】

 ここで彼はまた新たな問題も持ち出す。

「ジョーはブラジルからパーソナルトレーナーを連れてきていましたが、チームはこのトレーナーをプレシーズンキャンプに帯同させました。そのため、キャンプに参加しないジョー自身は彼とトレーニングすることができなかった。ジョーがブラジルから連れてきたのに」

 だが、ジョーが連れてきたとはいえ、このトレーナーの給料は名古屋が払っている。これは筋が通らないだろう。

「トレーナーがいないので、彼は新シーズンに向けて最大の準備ができるようブラジルに戻り、優秀なトレーナーのもとでトレーニングをしたのです。つまりすべてはチームのため、名古屋の損になることなど何もなかったのです」

 いくらチームのためだと言っても、ダメと言われているのに帰国するのは許されることではないと思うのだが――。

 それにしても不可解な話である。というのも、ジョーは決してお騒がせ選手ではないからだ。これまでマンチェスター・シティ、コリンチャンス、ガラタサライ、CSKAモスクワとビッグクラブでプレーしていたが、チームと大きな問題を起こしたことはなかった。敬虔なクリスチャンでもあり、いわゆる悪童ではない。

 彼のようなナチュラルボーンゴールゲッターはなかなかいない。2018年にグランパスに移籍するとジョーは瞬く間にチームのスターとなった。1年目には32試合で24ゴールを決め得点王となり、チームを降格の危機から救っている。

 さらに、ジョーはグランパスにいれば33歳にして高額の報酬を得ることできる。多少不満があったとしても、あと半年だけ我慢すれば100万ドルが手に入ったのだ。

 つまり両者は本来、ウィンウィンの関係にあったはずなのだ。事態がこじれたのは、それ以上にチームと選手の間に並々ならぬ問題があったからだということか。

 それが噂されているマッシモ・フィッカデンティ元監督との不和なのかどうかはわからないが、2月の開幕戦では彼はベンチにも入っていなかった。だが、ジョーは決して終わった選手ではなかった。その証拠にジョーは、7月30日にコリンチャンスで再デビューすると、16日間に5試合プレーし、3ゴール1アシストを決めていた。

 真相は明らかにならないまま、ジョーはユニフォームを脱ぐことになった。

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