現役引退の元ブラジル代表ジョーに名古屋グランパス退団時に何があったのか。ブラジルへ突如帰国したその言い分とは?

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 2023年、コリンチャンスからサウジアラビアのアル・ジャバラインへと加入したばかりの元名古屋グランパスのFWで、2018年のJリーグ得点王にも輝いたジョーが、退団と35歳での現役引退を発表した。

 ジョーといえば、日本のファンにとって最も印象に残っているのはその去り際だろう。日本とブラジルの間には多くの選手の行き来がある。しかし、そのなかでもジョーの、名古屋からコリンスチャンスへの移籍はかなり不可解なものだった。

2018年から2シーズン、名古屋グランパスでプレーしたジョーphoto by SportsPressJP/AFLO2018年から2シーズン、名古屋グランパスでプレーしたジョーphoto by SportsPressJP/AFLOこの記事に関連する写真を見る 新型コロナウイルスのためリーグ戦が中断されていた2020年6月17日、コリンチャンスが突如、名古屋グランパスの選手であるジョーと契約を交わしたと公式に発表した。これには多くの人が驚いたことだろう。なぜなら、ジョーが名古屋を辞めたという事実は報道されていなかったからだ。それから数日後、グランパスが公式サイトに声明を出した。

「株式会社名古屋グランパスエイトは、正当な理由によりジョー選手との契約を解除したことをお知らせします。なお、この件については現在FIFAのDRC(紛争解決室)に委ねています」

 DRCとはチームや選手の間の契約などがこじれた場合に裁定を下す機関である。その後、2020年11月24日付のDRCの裁定で、名古屋側の主張である選手の雇用契約解除、名古屋への賠償が正当な理由によるものと確証された。だが裁定に不服だったジョーとコリンチャンス側はCAS(スポーツ仲裁裁判所)へと控訴。この結果、要求は一部受け入れられ、340万ドル(約4億6000万円)だった補償金は260万ドル(約3億5000万円)に減額となったが、2022年6月15日に名古屋への補償金の支払いが命じられた。ただし、補償金の支払いはされていないという。

 名古屋グランパスはブラジルでとてもいい印象を持たれているクラブだ。日本の主要チームのひとつで、トヨタという世界的企業をバックに持つ優良で誠実なチームというイメージがある。ブラジルとの絆も強く、Jリーグ発足前のマルコス・ファロパを皮切りに、これまで3人のブラジル人監督がチームを率いており、そのなかのひとりはネルシーニョ(現・柏レイソル監督)だ。またこれまでに30人近くのブラジル人選手が名古屋でプレーしており、有名選手も多い。

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