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スペイン代表、黄金期から凋落へ。日本がつけ込むべきポイントは見えている (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

ユーロ2008で見せた「サッカーの理想型」

 そう思った矢先だった。2トップの一角として先発したダビド・ビジャが負傷し、退場を余儀なくされたのは。交代で投入されたのはセスク・ファブレガスだった。中盤選手である。布陣は4-4-2から、セナをアンカーに据える4-1-4-1に変化した。セスクはそのインサイドハーフに入った。さらに中盤過多になるのではないかと心配したものだ。

 ところがスペインは、この交代を機に息を吹き返す。シャビ、セナ、セスク。ゲームメーカータイプのMFが3人構える真ん中に、イニエスタも加われば、真ん中は濃くなりすぎる。そのことに、なによりイニエスタ自身が気づいた様子だった。彼はそれまでとは異なり、布陣どおりのポジションをカバーすることになった。

 以降、スペインの右サイドがロシアに対して数的不利に陥ることはなかった。スコアは3-0。左右のバランスがきれいに保たれたスペインの4-1-4-1は、続く決勝戦、対ドイツ戦でも維持された。サイドアタッカー不在という弱点を、中盤選手をピッチに広くバランスよくちりばめることで克服。ピッチに穴が生じることなく、それが同時に、高い位置でのボール奪取にもつながっていた。

 ドイツ相手に、スコアこそ1-0だったが、それは1-0のなかでも限りなく2-0に近い、余裕さえ感じさせる完勝だった。

 テクニシャンたちによる、パスがよくつながるボール支配率の高いサッカー。その優勝はインパクトに富んでいた。それまで、ヨハン・クライフ時代のオランダやミシェル・プラティニ時代のフランスなどがそうであったように、見栄えのいいサッカーをするチームは、勝ちにくいとされてきた。「いいサッカーと勝つサッカーは別モノ」と言いきる人さえいた。スペインはつまりこの優勝で、世界に対してサッカーの理想型を披露してみせたのであった。

 ユーロ2008明けのシーズン(2008-09)は、ジョゼップ・グアルディオラ新監督率いるバルサが欧州一に輝いた。バルサのサッカーが光って見えた瞬間である。

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